第03話「おいでませ! 超弩級學園艇オデュセウス!(Part,2)」
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----オデュセウス号入学式と同時刻。AM:09:15。
----地上。日本帝国中央都市・
「敵の数は?」
「コチラから視認出来る限りでは七人、八人……それ以上は確認できませんが、地下に独立機動兵器を所有してる可能性あり」
前進を重装甲の防弾ユニフォームに身を包む男達が電子バリケードの向こう側で立ち往生を食らっている。彼等の視線の先には、既に使用されていない廃墟の教会があった。
「敵もまた遠距離用のウェポン持ちが数人。報告によれば……魔法使いの存在も確認されています。中には例の奴も」
教会の中には武装した荒くれ物が数名。何かを探しているように見える。男達はこの荒くれ物達の対策の為、様子を見ているようだ。
「本部と連絡は取れたのか?」
「取れました! 命令は……」
男達のユニフォームの腕部には赤いラインが二本。特殊部隊の組織旗らしきロゴが描かれている。ノートパソコン片手の男が隊長格へ告げる。
「『多少の被害は致し方なし……【魔法攻撃】を許可する!』」
「そう来なくてはなッ!! このまま黙ってハチの巣にされるのだけはご免だったんだからなッ! 本部の命令に感謝の意を証明する!!」
新世紀発展都市20XX年。人類は科学と共に進化を遂げてきた。
科学は進化をすれば人類の生活をより便利なものにする。そして新たな発見を与える。新たな力を人に与える。
しかし、膨大な力・未知なる力は人を愚かに変貌させる。科学を凶悪な歴史の手段として用いろうとする!
ネットワークで人を欺き、物を兵器に変える。その繰り返し。悪は常に繁栄を続けてきた。どの世界もそれは変わらない。
「魔法使い部隊は
だがこの世界。科学と共に人類を支えてきた太古の文明が存在する。
それは科学でも証明不可。今も尚、未知の領域への進化を続ける不可思議存在。
「敵がコチラを視認……教会ごと破壊するッ! うちぃかタァはじめぇえッ!!」
【魔法】だ。人類の誕生後、世界を創造し続けてきたのは【魔法】。
「ファイアボール形成! 撃てッ! 一斉に黙らせろッ! 銃撃部隊とAI部隊は一斉掃射だ! 弾丸一つ漏らすことなく敵を狙えよぉっ!」
そうだ、君達で言うRPGゲームなどで有名なあの魔法だ。炎を操ったり、水を生み出したりなど、その不可思議存在は数多く。
科学とは別に……否、むしろ優先すべきは、その魔法とまで言われている。何せ、理屈では証明できない最強の存在なのだから。
一掃されていく荒くれ者達。
手の平から火の玉を放つ女性達は冷酷に、敵を焼き払う。
「……
人類を支えた魔法。それを生み出した存在を知っているだろうか。
それはかつて、人々が生まれるよりも前に存在したとされる前世代の住人達。我らと同じ人間、
「どうか、貴方達の力を粗暴にすることを。貴方達の墓標を壊すことを。どうか、今はお許しください----」
人々は崇め奉るべき
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-----オデュセウス号、集会ホール。
『オリエンテーションは第二段階に入る。各自、移動を開始せよ』
ホログラムが消える。最初の御挨拶はこれにて終了と言う事だ。
「お、終わった……?」
目を見開き話を聞いていた蓮汰郎であったが体力の限界であった。魔法を生み出した【神話時代の民達】の話と、この学園艇が存在する理由だ。
「つ、疲れた……話を聞くだけなのになんだか余計に……」
世界には魔法を悪用する連中があまりにも多すぎる。
その違法者達に対抗する戦士を育成する教育機関。それがこの学園艇なのだ。
「うぅう……駄目だ、このままじゃ無理そう……」
この海東蓮汰郎もまた、その戦士の卵の一人である。もっとも今はこの体たらく。戦士の恥を晒しているわけであるが。
「大丈夫?」
「……え?」
蓮汰郎の前に現れたのは銀色の髪の少女だった。
「ずっとお腹抑えてた。とても苦しそうだったから気になってて」
長いスカートの制服。黒い手袋。ストッキング。首元に黒いストール。春にしては着込んだ服装の少女が首を傾げて蓮汰郎に問う。
(キレイ……)
蓮汰郎は見惚れていた。心の中で『なんて綺麗な人なんだろう』とも思った。
「本当に大丈夫?」
「あ、いえ! 大丈夫ですはいッ! ご、ご心配をおかけしてごめんなさい!!」
故にこの返事。首を傾げた少女相手に裏返った声での返事。
女性相手の会話が慣れていないのがバレバレだった。人前で更なる醜態を晒し、蓮汰郎はうっすらと聞こえる周りからの嘲笑に顔を赤くする。
「これ、あげよる。少しは体が楽になると思うから」
銀髪の美少女は蓮汰郎に喉飴を渡して去っていく。
「……」
喉飴を手渡された蓮汰郎は去っていく少女の背中に視線を。
「ありがとう、言いそびれちゃったな……」
喉がすーっとするようなオレンジ味のミント飴。頭がクリアになった蓮汰郎は少女へ対しての無礼に謝罪を呟いていた。
・
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艇の案内が始まる。
教室。 セミナー会場。 職員室。 事務室。 そして管制塔……二時間近くに渡るオデュセウスツアーの最後に彼等を待つ場所。
「ここが
真剣勝負。 由緒正しき決闘の場。その名も空中闘技場コロッセオ。
「お前達の力を存分に発揮させるため用意された特別なステージだ。地上なんぞには頭でっかちな政治家もいる。法などに縛られぬ世界、ここでしか味わえない本当の戦いを楽しめ」
オデュセウス号にのみ存在する戦士達の戦場だ。ここで戦士達は己を競い合い、鍛え上げる。頂点・最強を目指す者さえもこの学園にはいる。
「……楽しみだよ。お前達の実力がどれほどのものか」
灰色髪の三つ編み。軍帽を被った高身長の女性教師の名は【ジャネッツ・セルリアン】だ。
「これから三年間。場合によってはそれ以上末永く世話になるかもな」
戦闘経験豊富。武装集団及びテロリスト魔法使い軍団の制圧回数実に数百以上。 軍の中で彼女の事を知らぬ者はいない。 初めて会場で話しかけられたその瞬間から、生徒達の間では緊張と恐怖が襲い掛かった。
数人の生徒が思った事だろう。とんでもないクラスに配属されたものだと。心臓が幾つあっても足りぬのかと。バラ色の学園生活を送る暇があるのかと。
「今年は実に将来有望なルーキーが集っていると聞いている……丁度いい。この戦場の使い心地を確かめてもらうついで、実力を見ておくことにしよう」
パッド端末を手に取り、配属された生徒を一人一人確認。
生徒達は入学前に軽い筆記テストと実技戦闘テストを実施している。そのデータを参照に戦士を選抜する。
「女生徒代表、【
「はい」
一人選抜! 生徒達が道を開き出来上がる一本線。銀髪の美少女が教師ジャネッツの前へと前進する!
「男生徒代表----」
ジャネッツは数多のデータが表示された生徒のページを閉じ、一瞬の間を開いてその生徒の名を呼んだ。
「【海東蓮汰郎】!」
「は、はいい!!」
腰を抜かしながらも教師ジャネッツの下へと向かう蓮汰郎。ギクシャクだ。
相当緊張しているように見える。あの教師に名前を呼ばれるだけでも心臓が締め付けられるようだった。
「戦場に立て。お前達の力、見せてみろ」
近くのベンチに腰掛け、教師ジャネッツはタバコを吸い始めた。実に教師らしからぬ姿だがこの学園に『教師がタバコを吸うな』のルールはない。故に許可!
「……よろしく」
ぺこり。この美少女の名は
「よ、よろしくお願いします。え、えっと、さっきはありがとうございました!」
蓮汰郎は言いそびれた喉飴の礼を言えるチャンスをくれた教師に心の何処かで感謝を告げていた。鴇上叉奈は小声で「どうも」と返したように見えた。
「二人とも武器を持っていないな?」
生徒の一人の発言から、二人の戦闘スタイルが予想が始まる。
武器の使用はどれでも許可されている。
武器と包丁にナイフに槍にハンマーに日本刀。 重火器となればアサルトマシンガンだろうがリボルバーだろうがミサイルだろうがロケットランチャーだろうが一台のロボットを連れてこようが問題なし。しかし、二人は武器を持たずに戦場に立った。
「となると魔法使いか……女子の方はそれっぽいけど……」
「男子の方、なんかヘボそうというか……頼りないって言うか……」
二人は魔法使い。ジャネッツに選抜されたこの二人は腕利きであるかもしれない。
「なんだかなぁ……男は頼りないってイメージを払拭してくれよぉ。代表~?」
しかし見た目でイメージ出来る叉奈に反して、蓮汰郎はそれっぽさがまったくない。啜り笑いはより大きくなっていく。
「合図はお前達の好きなように始めろ」
ジャネッツは面倒そうに空を見上げタバコの煙を吹くばかり。この適当ぶり、緊張感が抜けるからありがたいと考えるべきか。
「さてと、どうなるかな……?」
では諸君! ここで問題だッ!
「両方とも、どんな魔法を使うんだ……?」
今戦場に出てきた男子と女子!
この二人は一体どのような魔法で戦うとお思いか!?
ファイアボールか、水で敵を飲み込むか。
雷で薙ぎ払うか、肉体を強化し敵を殴るか!
その正解は----
「【ニュクス】。準備はいい?」
叉奈の体が、漆黒の闇に飲み込まれていく……!
彼女の力は炎? 風? 氷? 雷? 土? 光?
否ッ!!
普通に想像できる大まかな魔法のどれにも該当していないのだ! この少女が使う力とはッ!!
「あれって----」
蓮汰郎は棒立ちのまま佇んだ。
目も眩むような眩しい漆黒に包まれた少女の姿をただ茫然と眺めていた。
「戦闘準備完了……」
漆黒の中から、少女は何の突拍子もなく現れる----!
制服を脱ぎ捨てた姿。視線を集める不思議な装束を身に纏う戦士の少女---!!
そう、彼女の力は即ち、
【神への変身】なのである-----
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