『終わる人生の始まり』

血濡れた赤黒い海。

そこに、

空の器のようにただ浮かんでいた。

それが今の私だった。


「あー……スカッとした」

こうとは意地で言ってみたが、全くもってそうは思えない。

やはり復讐など、時間の無駄だったような気がしてきた。

でも、それでも。

意味はあったと思いたい。


──快感などない。

達成感もない。

ただ心が真っ白に塗り潰されるだけ。

別にこうなるのは最初から分かっていた。

なのにやった。

それに足る理由がある。

コイツに生が与えられたままでは、私は私の人生を始める事は出来ない。

──ああ、これから始まるのだ。

陰惨で虚無な、人殺しの人生が。

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