異世界で政略結婚したオレ?!【完結 】

さつき

第1話

俺は何のために生まれたのだろうか。

そんなのわからない。

自問自答。

俺が生まれたんだから母親に子種を

突っ込んだ誰かのおかげで

無事に受精したんだけど……。

記憶にない。親の記憶はすっぽり、何もない。

流行りかなんだかしらないが、放置子?

初めの記憶は誰もいない部屋に

ポツンといた気がする。

たまに食べ物をくれる人、服がキツくなり

脱ぐのにも苦労したり、ブカブカの

サンダルっぽいのをはいて、学校に

給食食べに行ってた気がする。

保健室の洗濯機が動いていて、世の中には

すごい物があるんだと気づいた。

毎朝早く行き、保健室で着替え

前の日の給食を優しい先生が

取り置いてくれていた。

飲み物と食べ物を食べれる事は

幸せだと感じていた。

勉強を頑張って良い点数をとると

先生が褒めてくれた。

下校時刻ギリギリまで、学校の図書室で

本を読み、学校の水道水を飲み

空腹を紛らわした。

それが俺の中学までの記憶。

中学を卒業する間際、いつもの帰る

ボロアパートの部屋にはもちろん

灯りはなく、ガスどころか

とうとう水道も止められていた。

何も入れる物はなかったが

ボロボロの3段ボックスすら

何もない部屋になっていた。


何年も親という者にあってない気がした。

親戚だと名乗る人が俺の面倒を見てくれて

高校、大学にいかしてくれた。

だが疎外感、他の人とは何か違う気がした。

今では誰からも必要とされず、

ただ年を重ねただけの独り身の中年男。

好きな人はいた……。

それが恋なのか憧れかはわからない。

仕事疲れが抜け切らない身体で

あんなに眠かったのに、なぜ

引き受けてしまったんだろう?

ポッカリあいたオレの何かを

うめたかったのかもしれない。

      

***


寒いなあ、まだ終わらないのかぁ。

ゾクゾクする。

風邪でもひいたのかな?


「2分経ちましたので、男性の方は

右側の席に移動して下さい。」

くるくるくるくるくるくるくるくる……。

俺自体、目が回りそうだ。

……はぁ~。あと何回続くんだろう。

何度か目のため息をこっそりついていた俺。

ため息は幸せが逃げると、聞いた気もするけど

ため息とあくびばかり出てしまうので

仕方がなかった。

そして自分の顔に微笑を浮かべながら

同じような顔に同じ様なセリフを

何度も口にしていた。

仲の良い友人、そしてその兄からの

頼まれ事に今更ながら後悔していた。

友人の兄、その人が好き?というか

俺の憧れの人だからって

詳しい話も聞かずオッケーした俺が

悪いんだ。今更遅いが、なんだかむなしい。


仕事先の都合でちょうど空いていた

時間に電話がかかってきた。

いつもの癖で、携帯の着信画面をみると

非通知。番号を知られたくないお客様か?

とりあえず通話ボタンに指を触れさせた。

声の主は聞きなれない声で、数年前に

あったきりの憧れの…人の名前を告げた。

眠いけど、このまま家に帰っても

携帯を見ながらの寝落ちするだけと思い、

指定場所を脳内にメモした。


ビシッとしたスーツ?というかいつもの

仕事着、何の変哲もないスーツを来て

待ち合わせ場所に行った。

立派なホテルに辿り着くと、数年前の

笑顔に年を重ねた人、あの頃より髪の毛が

長く後ろに撫で付ける様な髪型だった。

相変わらずの素敵な笑顔で、声も優しく

俺に話しかけてくれた。

オレの憧れの人は友人の兄だ。

そしてその憧れの人の横に、ニカッと笑う

おまけのような友人もいた。

「本当助かるよ。本当にありがとう。」

そう言いながら俺の手を握ってきた。

どうせなら友人の兄に、オレの手を

握って欲しかった。

んっ?別に男が好きなわけじゃないし

ちゃんと異性とイチャコラして

ゆくゆくは結婚して、子どもはできれば

欲しいと思っている。

うん、男としてじゃなく、たまたま

友人の兄が優しくて面倒見よくて

素敵な人だから、オレの憧れの人と

なっているだけだ。

友人はともかく、その友人の兄に俺は

数年ぶりに逢えてうれしいのをグッと

押し込め笑顔で"別にいいですよー"って

感じで答えたのだった。

BL要素の好きではなかった。

あ、こ、が、れ、の人。

何度も言うがお友達と憧れの人、

誰にでもある感情だと思っている。

普通に女の子は可愛いと思うし

たくましい男性に抱かれたいとか

思わない事もない事もな……ゴニョゴニョ。

恋愛するなら年上がいいかもって感じだ。

うん、それだけだ。


今ここにいるみんなは、ほぼほぼ年下だよな?

俺がここにいる意味あるの?

あくびも出て目も潤んできたわ。

早く帰りたい。


「本日は、ご参加頂きありがとうございます。

男女ともに各25名での回転式自己紹介タイム

これにて終了です。お疲れ様でした。

引き続きまして、お手もとの用紙に

ご自身のお名前と第3希望まで

お相手のお名前をお書き下さいませ。」

女性が座る椅子を取り囲むように

男性陣の椅子が置かれていた。

緩やかな音楽が流れた室内で

2分ごとに移動する男性陣。

それが終わると参加者の名前が書かれた

一覧表を見ながらお気に入りの名前を

書くシステムだったはず?!

お気に入りの人がいない場合

どうすればいいんだろう?と思いながら

俺は数合わせの為にいるし、

お気に入りもいないから何も書かなかった。

一瞬、友人と友人の兄の名前を書こうとしたが

男性が男性の名前を書いたら

ややこしくなる。しかも友人の兄は主催側だ。

学生の頃はおふざけで許されるが

もう社会人中堅の年齢だ。

許されるどころか非難されてしまうかもしれない。


はぁ~早く終わらないかな?

フリータイムなんていらない。

早く帰って愛しの我が布団に

身体を埋もれさせたい。

毎日の睡眠不足を補う為に使おうか

迷っていたポッカリ空いた

空き時間だったのに。

憧れの人からのお願いをついつい聞いてしまった。

眠い。眠いよぉ。早く帰って寝たい。


参加費は女性1000円、男性は3000円

俺は数合わせだし、友人の兄が

払ってくれているので無料だ。

友人の兄が勤めている会社の企画だったが

ドタキャンが数人でてしまい急遽サクラとして

集めたものの会社の人たちでは

足りず友人はもちろん俺まで参加

する事となってしまったのだった。

そんなにドタキャンされたのか?


ワンドリンクに簡単なおつまみ程度の

回転お見合いパーティ。

お見合いメインならこんなもんなのか?

同じ3000円なら、モーニング兼ランチを

かなり豪華に食べれるかもしれない。

食事ととらえてるから高く感じるのかも

と自分では払ってないのに、そう思いながら

ジュースをチビチビと飲んでいた。

貧乏性の俺は氷がとけ味が薄くなった

ジュースを飲み干していると

ヒソヒソ声で俺に視線を送る参加者たち。

ケチ臭いのがバレたか?

挙句の果てには、営業スマイルで

話しかけても目を逸らされて

何も話してくれなくなる始末。

空気悪いし眠気満開、

散々な回転お見合いパーティーだった。


眠気まなこで友人の話を聞いていた。

回転お見合いパーティーと説明を聞いて

回転寿司が食べれるのかと、一瞬でも

思った自分自身をこの後、かなり、

後悔することになったのだった。

これが終わったら、友人に回転寿司でも

奢ってもらおうかな。

最近の回転寿司は色んな物が回ってるし、

ナンコツ唐揚げ、牡蠣(かき)フライ、

何か食べたい。お腹すいたなあ。


とある一流ホテルの一室。

左胸に 大きなハートマークの名札には

ひらがなで書かれた自分の名前と年齢。

「さ、32歳…加藤杏樹(かとう あんじゅ)

です。趣味は読書と映画鑑賞です。」

仕事は小さな不動産屋の受付と事務だった。

俺の育ての親?俺を面倒をみてくれた

親戚なら叔父さんと叔母さんの不動産屋は……。

「読書好きなら、書類読むのも得意だよね。」

「うちの不動産屋は小さいから、暇つぶしに

バイトしてみないか?」

叔父さんと叔母さんの言葉に誘われ

バイトし、高校生で時給1000円もらっていた。

美味しいバイトだったが、大学を

卒業し入社すると、グレー企業?

いや?アレは立派なブラック。

時間外労働は当たり前だし、

定時?そんなもんあったのか?って

思えるくらいのブラックな

仕事内容ばかりだった。

お客様を対象の家屋紹介、送迎。

お客様都合の電話対応しながらの、

書類整理。

夜や深夜にしか動けないとか、

早朝とかは当たり前。

俺の時間?そんなものは……。

勤務時間は余裕の12時間。

お客様が来ない暇な時は暇なのだが

一度くると、連なるように来るので

クレーム処理はもちろん、お茶出し

物件選びでイチャイチャする

カップルを横目に、2組目のお客様の

接客をする毎日。

叔父さんと叔母さんも同じく忙しい人だった。

サボってばかりで仕事押し付ける

人たちではないから、オレも文句は

言えないけど、もう1人雇って欲しいと

思う毎日を過ごしていた。

お給料もそこそこ良いほうだけど

連日の勤務時間と休日出勤に

睡眠不足でクタクタの毎日だった。

使えるお金があるのに、疲れすぎて

買い物に行くのも億劫な毎日。

出前ではなく、食べに行きたい。

1人ラーメン、1人焼き肉、1人回転寿司。

お一人様だからか、スーパーの値引きされた

唐揚げ、牡蠣フライ、握り寿司とか

たまに食べるけど完全に野菜不足だ。

携帯電話で色々食べ物の検索をしたが

行くのもしんどいなあ。

野菜不足、睡眠不足、体調不良。

はあ~、むなしくて寒い。


加藤杏樹(かとう あんじゅ)

32歳、大卒

仕事、不動産屋の事務かな?

趣味、読書と映画鑑賞。

読書?そんなものする暇なし。

映画鑑賞、それも見る余裕なし。

本当は、携帯のイケメンアプリ、ゲーム、

アニメ、マンガ、小説がみたい。

お客様や取り引き先と話を合わせるため

眠さをこらえ、流行りの本、映画や

ゲームのあらすじだけ検索して

頭に入れていた。

食べ物の検索していたはずなのに、うっかり?

いつのまにか登録していたプロフィール。

あれ?このプロフィールは何かの

アプリで適当に当てはめたものだ。

まあ、これあとで消さないとなぁ。

眠い、すごく眠い。

ただでさえオーバーワークで睡眠不足なのに

携帯で検査したゲームのあらすじを

読んでいた。

面白そうなゲームだなぁ。

あっ、小説もあるんだ。

バージョン違いも、ヘェ~。

こんな感じで睡眠を削りながらの寝落ちの毎日。

睡眠時間はほんの3~4時間かもしれない。

最近疲れが取れなくなっていた。

気がつけば30歳を超えた独身。

両親は全く知らない。

写真もないどころか家具すらない。

俺を引き取ってくれた叔父さんと叔母さんは

すごく仲が良い夫婦である。

就職を機に一人暮らしを始めたが

心配してくれたのかはじめは、2軒隣の

マンションを紹介してくれた。

仕事場まで徒歩1分……。

近すぎてなんだか照れ臭い。

独り立ちの意味がない。

家賃がうんぬんとか、色々言い訳して

仕事場まで徒歩10分程度の激近の

アパートに引っ越した。

………10倍の距離。

「……。」


回転お見合いパーティでは、

目の下のクマを隠すためいつも以上に

営業スマイルしていたかもしれない。

友人の兄である憧れの人の為に頑張った?!

パーティーもよくわからないうちに終わっていた。

当然、お目当ての人とかはいなかった。

みんな同じ顔に見えたし、女性は

気合いを入れた格好している人ばかりで

むせかえるような香水などの匂いに

気分も悪くなっていたのだった。

華やかな会場と華やかな人たち、

ここは結婚式場か?と思えるドレスや

着物を着て気合い入ってる人もいた。

俺はいつもの仕事で着ているけど

逆に悪目立ちする姿だったかも。

とにかく眠かったのとなぜか寒かった。

約2時間の回転お見合いパーティーは

終わりを告げた。

お腹をすかせた、寒気がおさまらない俺は

とあるホテルの会場から立ち去ろうとした。

何か美味しい物、牡蠣、唐揚げ、野菜サラダ、

ゴマドレッシング、フレンチドレッシング、

玉ねぎのドレッシングだと野菜不足の

解消に少しでもなるかなぁ?

さつま揚げ、握り寿司……あのスーパーに

まだあるかな?早く行かなきゃ、でも

身体が鉛のように重い……。

俺の意識はなぜか、そのままなくなって

しまっていた。

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