第5話 隠ノ家、鷹使いの秘術
「鷹使い……」
天籟は月鈴に尋ねる。
「たしか……宴のあとの余興で鷹狩りをするが、鷹使いとはその鷹の世話係なのか? 動物が嫌いで鷹狩りに参加したことないが……」
「はい。鷹使いになるには師匠に弟子入りして一人前になるまでに数年かかります。だから特別枠でわたしは入宮しました。主上にはすでに専属の鷹匠がおりますが、わたしはその他の皇族の鷹担当です」
「して、話とは」
「隠国は消滅しましたが、
鷹を手に乗せたまま、月鈴は振り返った。
「――己の意識を動物に飛ばす秘術です」
「ほう――」
天籟は思わず扇子を広げた。
***
二千年以上も君臨し続ける
小国である
***
「よしよし、いい子だね」
「キィ」
月鈴は
「龍の髭飴でございます。胡桃ときな粉の二種類をご用意しました。かけてお召し上がりください」
皇子付き侍女であり、若く美しい
「しばらく、誰も寄せ付けるな」
「かしこまりました」
そっけない天籟の言葉に詩夏は残念そうにすぐ下がった。
(やれやれ。この美しい天籟皇子に侍女たちは夢中なのか……。見初められたら侍女から大出世だもんね。頂に近いお方だから上手くいけば一族は安泰って理由かも)
「月鈴、話の前に、まずはお茶をいただこうか」
「ありがとうございます」
(わあ、こんなお菓子、見たことない。繭玉みたい。すごーい。おしゃれ~)
月鈴は天籟の横に座り、もの珍しそうにきな粉をかけ、ふわふわっとした甘いお菓子を口いっぱい頬張ると天籟がふ、と笑った。
「なんですか?」
「いや、なんでもない。ゴホンッ――。ここなら、誰にも聞かれないぞ。話は
「はい。
「しかし、そんな異能がありながら、なにゆえ抵抗もせず我が国の属国となったのだ」
「それは―最善策をとったのだと思います。どう考えても
「そうか……。長年ひた隠してきた秘術をどうして燿国に力を貸してくれる気になったのだ?」
「今だからです。隠ノ領に鷹使いは多数おりますが、秘術ができるのはわたしと、あとは隠領に住む年老いた師匠だけです。
燿国が世継ぎや皇族が次々と亡くなる。呪いではなく、骨肉の争いでしょう。そうやって内輪もめしているうちに国が傾くと考えたからです。戦わなくなった平和な今、力をつけてきた隣国の
「なに……⁉」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます