第15話 ガルレオン族の掟


 日が落ち外は暗くなった。


 俺達はガルレオン族族長のジンさんの家に招かれていた。


 俺とアイリスさんは広い部屋に通されて、そこでガルレオン族の方々と輪になるように座っている。

 エリシアさんとジンさんは話しがあるとかで、二人で何処かに行ってしまったので、戻ってくるのを待っているのだ。


 俺の隣にアイリスさんが正座し、その隣でサラサさんが胡座をかいている。


 部屋の中は蝋燭ろうそくで照らされているが、かなり薄暗い。



 俺が槍を避けている間、アイリスさんとサラサさんは戦っていたのだが、最終的には武器を手放し、取っ組み合いの喧嘩になっていたらしく。アイリスさんは頭にたんこぶ、サラサさんは顔や体が土で汚れていた。


 ちなみにサラサさんは身長が165センチくらい。キリッと整った顔立ちで白銀のぼさっとした髪を腰まで伸ばし、褐色の肌にどこかの部族っぽい露出の多い毛皮の服装で、ウエストは引き締まっているのに胸は大きいから、正直目のやり場に困る。


 最初にアイリスさんに倒された男もいて――、不機嫌そうにこっちを見ているな。目を合わせないでおこう。


 しかしガルレオン族の人達って無言だよなぁ。皆大きくて強面だし。


 はぁー、いつまで待たされるのだろうか……。



 アイリスさんとサラサさん、お互いにそっぽを向いて無言だったのに、それを壊すようにサラサさんがアイリスさんに話しかけた。


「なぁお前、風族なんだな。オレ程じゃないけど、まぁまぁ強かったぜ」


 とサラサさんはニヤニヤ笑う。


「まぁまぁ?頭も弱いんですね?あのままやっていれば、勝っていたのはわたしですよ?」


 と真顔のアイリスさん。冗談とか通じないタイプである。


「はぁ!?どう考えてもオレが勝ってただろ!風族は強いって聞いてたけど、弱いのはお前だけなのか?」


「むっ、言いましたね。その青あざだけじゃ足りなかったようですね?」


「お前だって頭にたんこぶ作ってるだろうがw」


「いいでしょう!今この場で打ち負かしてあげますよ」


 いやいや、何やってのこの子達、アイリスさんもアウェイで喧嘩とかやめよ?ね?


「アイリスさん落ち着いて。もうすぐエリシアさんが帰ってくると思うしさ」


「……ふんっ! だいたい初対面なのに口の聞き方というものがあると思います」


「んだよ。だってお前、オレより年下だろう?」


「わたしは16歳ですけど……」


「えっ!ちょっ、嘘付くなよ!13か14くらいだろッ?」


「嘘なんて付いてませんっ!」


「……」


「そう言うあなたは何歳なんですか?」


「じゅ こ だよ」


 サラサさんは聞き取れない声で何か言っている。


「えっ!?何ですかっ!?聞こえませんよ!?」


「じゅう……ご、だよ。別にいいだろ」


 俺は見てしまった。アイリスさんが一瞬、優越感に浸った表情を見せたのを。


 しかし15歳だと?けしからんな。ガルレオン族って発育良すぎでしょ。なにこのおっぱい?


 あれ?正面の強面のおっさんが俺このとを凄く睨んでいるぞ。この流れだとサラサさんの親父とか、そんなところだろう。鼻の下を伸ばす前で良かった。





 サラサさんのことは見ず、親父とも目を合わせないようにして、暫く待機していると、エリシアさん達が帰ってきた。


 ジンさんは広間に入ると上座に胡座をかく。エリシアさんは俺とアイリスさんの後ろに座った。


「みんな、聞いてくれ。大事な話しがある」


 ジンさんはおもむろに話し始めた。その低くて渋い声と表情、まるでどこかの組の親分である。


「この地に村を作り、最初の族長になった男。我々ガルレオン族の英雄『獣神エド』の盟友でもあったサゴ・ガルレオン様が俺達に与えた唯一の掟、『ロードとリリエラが起きたら協力してやれ』。……それが現実になった」




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