労働力として召喚されたバックパッカーは、素行が悪く国民ポイントがなくなったので早速処分されそうです。~なら俺は建国して自由に生きてみせる!~
むんばす
第1話 自由のない異世界
「国王様、どうやら成功のようです」
「おお、成功か!」
ん? ここはどこだ?
手触りの良さそうな赤いローブをまとい、冠を被ったヒゲ面のオッサンが、大きな椅子の上で歓喜している。
俺は視線を動かし状況を確認する。
玉座の間と言ったところだろうか、体育館のような部屋に大きな扉。
扉からオッサンが座る大きな椅子までは、赤い布が綺麗に敷かれていて、俺はその敷物の上で立ち上がる。
白い髭を揺らすオッサンの隣には、長い棒を持ったオバハンが俺に視線を浴びせている。
他には手足のついた鉄の塊が約二十体、正面を向いたまま視線を浴びせて来る。
人目を集める理由が、社会の窓では無いことを確認していると、オバハンが口を開いた。
「お前は、王の命に従って、神に愛された私の力により新たな世界へと召喚されたのだ。突然のことで驚いているでしょうが──」
「よぉっしゃああああー! これって異世界転移ってことだよな!? バックパッカーの血がさわぐぞー!」
漫画で見た異世界的な場所を求めて、日本を出て五年。
理由は分からないがついに来た!
「お、おい。名はなんと言う?」
「吉岡転次郎です! 俺に使命とかあるの? 魔王倒せばいい? 魔法とかスキルってあるのかな!?」
異世界を旅したらどんな気分だろうか。
勇者になって魔王を倒せって言われたらどうしよう。
どうせなら職業くらい自分で選びたい。
冒険者になれば縛られずに旅できるか──いや、商人も捨てがたいな。
期待し目を輝せると、オバハンの棒が発光した。
同時に俺の身体中に紙で切ったような痛みが走り、身に纏った布切れに血がにじむ。
雲行きがあやしい、俺のイメージしている異世界転移と違う。
だがまあ仮に追放されてもスキルがあれば知識と合わせて大抵どうにかなる。ひとまずこの場を生きて乗り切らないとな。
「口を慎みなさい、王の御前よ。だがまあ、質問に答えてやろう、今のが魔法よ、スキルも存在する。衛兵、腕輪を」
「失礼しまし────え、何? 何コレ。」
カチャリ。
抵抗する間もなく右手首に輪っかを装着された。
重さはほとんど無い、緑色の輪っかは異世界に召喚された25歳の日本人男性を写している。
「お前のスキルは封じた。あと使命など無い、強いていえば労働だ。労働力として召喚したのだからな」
「……労……働……?」
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