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 田原様の席の前で立膝をつき、


「お待たせ致しました。そちらお下げしますね」


 インフォメーションブックを受け取り、壁際に立てかける。

 眼鏡を外して胸ポケットに入れる田原様に、


「それではフットバスを下げさせていただきます」


 失礼しますと声をかけ、膝掛けをめくり上げ、


「右の御御足からあげていただけますでしょうか」


 私は右膝を床につけ、左足の立膝の上にタオルを広げ、フットバスの蓋を外す。

 田原様の右足を膝の上に載せてもらうと、素早くタオルで包みながら水気を拭き取っていく。指の間も丹念に吹きながら、


「何処か触られて痛い所や巻爪や魚の目など、ございますか」

「とくにないかな」

「かしこまりました。では左足もこちらへ」


 田原様の右足のかかとを持ちながら、私は自分の左足の膝を床につけ、その上に田原様の右足を乗せ、右足の立膝の上にタオルを広げる。フットバスから上げた田原様の左足を膝上に乗せてもらうとタオルで包み、手早くフットバスの蓋を閉めて、ひっくり返らないよう後ろに下げると、インフォメーションブックを立て掛け、足を拭いていく。


「こちらの脚も、お怪我などは大丈夫ですか」

「うん、大丈夫」

「胃腸が弱いと書かれておりましたが」

「うん。神経の病気らしくて、鍼灸の先生のところに二十五年以上、週一で通って、先生と話しながらお灸と指圧をしてもらってる。自律神経で有名な先生にも、月一くらいで話を聞いてもらってます。でもずっと、胃腸は弱くてね」

「そうなんですね、かしこまりました。胃腸関係の反射区を念入りに施術させていただきます」


 拭き終えると、左手で田原様の両足首を持ち、


「それではオットマンの上に置かせていただきます。失礼します」


 右手でオットマンを横向きに変え、そっと両足を乗せ、オットマンに掛けられ左右に垂れ下がるリードを両足に掛ける。


「リクライニングチェアを倒しますので、失礼します」


 左足を前に出して左腕を伸ばし、チェアの上部を押しつつ倒してから、折りたたまれた膝掛けブランケットを伸ばし、首元まで掛けていく。

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