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黒のクリップボードと黒い表紙のインフォメーションブックを脇に抱え、チカちゃんが用意してくれたフットバスを持っていくと、田原様がちょうどズボンの裾を膝上辺りまでまくりあげたところだった。
「お待たせ致しました」
と、声を掛け、
「こちら、ティートリーのエッセンシャルオイルが入りましたフットバスとなっております」
田原様の前へフットバスを移動して、蓋を開ける。湯気とともにフレッシュでシャープな清潔感のある香りが立ち上る。
「マスク越しでも。少し香りがするね。これがティートリーなんだ。どんな効果があるのかな」
「殺菌や抗菌、真菌、抗ウイルス効果などがこざいます。どうそ、片足ずつゆっくりお入れください」
「そうなんだ、はいはい」
つま先から、ゆっくり湯に入っていただく。
「お湯加減はよろしいでしょうか」
「気持ちいいよ、足裏にゴツゴツしたものが当たるね」
失礼します、と微笑みながらフットバスの蓋をし、隙間から湯気が脱げないようタオルを掛ける。
田原様は、フットバスの底にある突起に足裏をこすらているのだろう。キュキュッと小さく音が聞こえる。私は気にせず、脇に挟んでいたクリップボードとインフォメーションブックをフットバスに立て掛けて、「膝掛けを失礼します」オットマン上にあるブランケットを手に取り、田原様の膝にかけた。
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