魔法少女と怪獣の結界世界

秋丘光

第1話 1日目/プロローグ

 私が結界で怪獣と過ごすようになってからどれほどの月日が流れたのだろうか。



 私が魔法少女となって2年目の秋。いま目の前に立っている怪獣が姿を現した。もちろん怪獣という表現のとおりその姿は100mは優に超えていた。魔法少女として私は、いや私たちは怪獣との決戦に挑んだ。 

 


 魔法少女は私を含め全員で6人。今までこのメンバーで何回も敵と対峙し乗り越えてきた。しかし今回に限っては話が違った。勝てる見込みが全くなかったからだ。

 

 私たちが対峙してきた敵は姿かたち、能力は違えどもサイズとしてはほとんどは大人サイズだ。一番大きなものでも象より一回りほど小さかった。


 

 そんな私たちが100m以上の怪獣と戦い勝つなんてのは現実的ではない。もちろん6人もいれば特撮やアニメのようにダメでも最後まで戦い抜こうという人もいた。どちらかといえば私もそちら側だった。


 私たちは戦うかどうか、戦うとして勝つためにはどうすればいいか話し合った。というより感情をぶつけ合った。


 そうして私たちがうろたえている間に街は、ひとつまたひとつと怪獣に踏みつぶされていた。



 最終的に戦うことにはなった。でも勝つための戦いではない。脅威を遠ざけ時間を稼ぐための戦いだ。それが怪獣を結界に閉じ込めること。でもそのための問題が誰か1人が怪獣と一緒に結界の内から結界を維持する必要があるということだった。


 書き出しから分かるように、その役割をすることになったのが私、になっちゃった。



 昔から魔法少女やヒーローに憧れていた。そんな性格を周りの魔法少女はよく理解していた。誰からともなく、結界内で怪獣と過ごせるのは私しかいないと言い出した。なぜなら他のメンバーの多くは私より年上で魔法少女としての力が衰えてきて引退・引継の時期が近かったし、年下の子は魔法少女になったばかりで経験が浅い、ということらしかった。

 

 誰も反対しなかった。それは私を含めてだ。

 

 あの頃の私は自己犠牲を必要以上に美化し尊いものとして崇め憧れていたし、何より周りの声に浮かれ流されてしまっていた。

 

 言葉巧みに騙されていた、と気づくのは結界に閉じ込められてから後の話だ。

 

 ともかく私は『怪獣と結界と閉じ込められる』ことが何を意味するか深く考えることもせずに、その役割を安請け合いしてしまった、というわけだ。



 私たちは怪獣を囲むように決められた立ち位置で呪文を唱えた。それぞれの身体が発光し始める。そして私たちの光は線となり円を描いて繋がっていく。全ての光が繋がると今度は球となって完全に怪獣とその周辺を包み込んだ。



「メイク・ゾーン」私たちは声を合わせて叫んだ。



 そして魔法少女の私と怪獣は結界に閉じ込められた。

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