少しのラブとただのオタクとそんなラブコメ

美しい海は秋

第1話 出会いっていつも突然だよね

「本日もご乗車ありがとうございます、まもなく……」


電車のアナウンスが流れて、それを聞いた私は持っていた小説をカバンの中にしまった。

タイトルは”もうすぐ結婚するんだ”というハーレムもののライトノベルだった。


いやー、本当にヒロインの子達が可愛くて可愛くて、じゅるり。


軽くおっさんモードに入っている私に対して、変な目で見る人は少ない。

それは心の中ではニヤニヤと笑っているけれど、表面ではニコニコと笑っているためである。そして逆に顔は整っているのでニコニコと笑っている私に対して違う意味での視線は感じていた。

前の学校での友達にはずるいとよく言われた。


そんな私がなんで電車になんか乗っているのかというと、親が都会に転勤になったので私は田舎に住んでいる伯母さんの元に送られることになった。

その途中の段階が今の状態だった。

アナウンスに従って、電車を降りると、今度は乗り換えをしなければいけない。


「そのはずなんだけど……」


もう来ているはずの電車がまだきていない。

都会だったらほとんどありえないことだけど、田舎だとこんなに大雑把なのだろうか?

そう思っていると、アナウンスが流れる。


「現在〇〇番ホーム、一六時四〇分発の電車は、線路に猪がいたためゲ現在少し運行が遅れております。お客様には大変ご迷惑をおかけしますが……」


電車が猪の影響で遅れるなんてことあるんだ。

愕然とした私に対して周りは対して気にした様子もない。

どうやら田舎では日常的にこんなことがあるようだ。

ここで慌てるのはよそ者として見られる可能性が高いため、変に行動は起こさない。


先ほどの本の内容が気になるが、人目がある状況では自重して読まないようにしていた。

電車こないなー。

靴先をコンコンと鳴らす。


「電車来ない……」


思わず漏れた声にいらない気配がよってくる。


「あれー、君一人?」

「一人だろー、よかったら電車くるまで遊ばない?」


こういう人が田舎にもいるのかと思ってしまったほど、チャラい喋り方をする人がこちらに寄ってくる。

こういうのは嫌いなやからだ。

そう内面では思いながらも表面では苦笑いしかでない。


そもそもあまりコミュ力がない私はこういうことが嫌いです。

急に話しかけられるとか、正直にいうと論外です。

それなのにこういう人は後をたちません。

なんででしょうか?

自問自答することでこの危機的状況を楽しめるような気がして、そんなことを思っていると、目の前に一人の人が入ってくる。


「おっす先輩達」


かばうような仕草で入ってきたその男の子は私の知らない人だった。

あ、当たり前かー。

引っ越してきてすぐに知り合いと出会う。

そんなことはギャルゲーにだけ許された世界線なのだ。

そんな意味のわからないことを考えながらも、登場によって逃げるタイミングを少しはかるために会話を聞くのだった。

ま、運動神経はいいからね。

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