第41話 モブ学生side憧れの生徒会

俺の通う英明学園中学部の生徒会は壮観だ。正確には生徒会メンバーのことだけど。中2の結構捻くれてると自覚のある俺から見ても、胸が高鳴るというか、憧れを感じるんだ。



俺が名門の英明学園中学部に合格した時は、この世の春だった。俺も、親も、周囲の同級生たちも凄い喜んでくれたし。でも実際入学してみればどうだ。


名門だけあってアルファが多いせいもあるけれど、ベーターの中でも優秀だと言われてた俺でさえ、150番ほどで右往左往。ど真ん中だ。エリートだと思ってた俺が、平凡オブ平凡。俺はすっかり捻くれてしまった。


だが、ひとつ上の学年の生徒会メンバーに接すると、世の中はつくづく広いなと諦めに似た羨望が湧き上がってくる。



生徒会長の木崎悠太郎先輩は、いかにもαっぽい、体格も良くて、成績も常にトップ5以内。一見武骨な無表情だが、時々笑顔になると妙に柔らかい。そんな時は大抵その側に、例の人が居るんだけど。


副会長の吉良好輝先輩は、野球部のエースだったのに生徒会のために退部したらしい。やっぱりαで、成績もトップ5以内。無駄にイケメンだから怖い顔にも見える。何かいつも睨んでるっていうか。



会計の岸 尊先輩は、お洒落オーラ満載のタレ目の柔らかいイケメンで、いつも何だか楽しそうだ。やっぱりαで、成績はムラがあるのか、1番の時もあれば15番の時もある。まぁ、十分頭いいけど。


書記は俺たちベーターの誇り、佐々木千隼先輩。おっとりしていて、でも成績はαの中に食い込む常時50番圏内。良い時は30番台にもなる。顔は結構整ってると思うけど、普通?俺たちβってやっぱりαやΩの中に混ざると凄い普通なんだよ。記憶に残らないっていうか…。



そして今期の生徒会の話題をさらったのが、広報の三好理玖先輩。広報に理玖先輩が選ばれた時は、やっぱり派とまじ派が半々だった。だって、理玖先輩はΩだから。Ωが生徒会のメンバーになるって今までに前例が無いんじゃないのかな?


でも蓋を開けてみたら理玖先輩って成績は50番台だし、生徒会メンバーとは幼馴染だし、“約束”相手も居るし、生徒たちからの人気も凄いから、広報はピッタリとしか思えなくなったというか。



また、約束相手も凄いんだもんな。今は英明大学1年でもう高校には在籍してないけど、在籍中は絶大な権力持ってたっていう理玖先輩のお兄さんである三好会長を支えた副会長の東先輩だっていうんだから。


そう考えると、理玖先輩って何気に凄いよね、色々な意味で。


実は俺は理玖先輩の大ファン。裏で出回ってる画像データを買ったくらい。屈託のない無邪気な笑顔が俺の捻くれた心に刺さるっていうか。Ωの理玖先輩があんなに成績良いのはやっぱり努力してるんだと思うと、俺も頑張ろうって思うんだ。



一度、廊下ですれ違った時に慌ててた理玖先輩とぶつかっちゃって、俺もぼんやりしてたのに、理玖先輩凄く謝ってくれてすっかりファンになっちゃった。綺麗でかわいいだけじゃなくて、性格も良いなんて詐欺だよ、ほんと。めっちゃ良い匂いしたし。


東先輩と理玖先輩の約束までの噂話も、ちょっと嘘なんじゃないかってくらいロマンチックで、女子たちは時々話題にしてはキャーキャー言ってる。


まぁ、そんなこんなで、今回の生徒会は生徒たちの期待値も妙に高くなってるってわけ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る