第12話 それから僕は

結局、それから僕はあっくんから手紙をもらった。涼兄があっくんに何か言ったのかもしれないし、何で突然手紙をくれたのか理由は分からなかったけど…。


手紙には僕に会えて嬉しかったこと。今、僕に会うのはあっくんがまだバース的に不安定だから、お互いに悪い影響がありそうなため、会うのは心配なこと。本当は毎日でも会いたいこと。僕が大好き…なことが書いてあった。僕は手紙を読めば読むほど、何だか叫び出したい気分になった。



「篤哉から手紙きたんだって?」


涼兄が僕の頭を撫でながら尋ねてきた。僕は口元がニマニマしてしまうのが止まらなかった。涼兄はフッと嬉しそうに微笑むと良かったなってひとこと言うと学校へ行ってしまった。僕は涼兄がいつの間にか随分と優しくなってる事に気がついた。


それから僕は4年になったら習いそうな、バース教育の本を図書館で借りて読んだ。僕の家みたいに親がαとΩだと子供もどちらかしか生まれないらしかった。βの事は考えなくて良くなった。


ちょっとドキドキしちゃったけど、僕が考えるより男がオメガでも大丈夫そうだった。今は昔と違って良い薬があるから、オメガも普通に生活出来るって書いてあった。



でも結局4年生になってバース教育を受けても、発情期の項目は何度読んでも具体的に何をどうするのかよく分からなかった。一部の生徒たちはクスクスと顔を赤らめて、何だかコソコソ楽しそうに話してたけど。


僕が悠太郎達にちょっと聞いた時も、二人とも顔を赤くして知らないって言い張った。そうか、知らないって恥ずかしい事なのかもしれない。そう思った僕は、それからは、さも知ってる風を装って時々出る会話に参加してたんだけど。



なぜかクラスメイト達はその手の際どい感じの、僕が知りたい話題になるとこっちをチラッと見て赤くなって会話をやめちゃうんだ。だから僕は諦めて、まぁ詳しくは僕が本当にオメガだった場合に教えてもらえばいいやと思い始めていた。


だって僕は遅ればせながら背も伸びてきて、成長期が来たみたいだ。まだアルファである可能性も捨てきれないぞ?相変わらず細いけど…。そんなこんなで僕はいつの間にか最上級生の6年生になっていた。



「そう言えば、また理玖の事聞いてくる奴がいたぞ?」


尊が面白そうに僕を見ながら言ってきた。僕より先に悠太郎が尊に怖い顔で尋ねた。


「…誰?」


ミコトはニヤニヤしながら僕と悠太郎を眺めながら言った。


「中学部の2年。榊って奴。約束した奴は居るのかって。でもこれ聞いてくる奴増えたよな。まだバース判定もしてないって言うのに。来年にならなきゃわかんねーよなぁ。まぁ理玖はバース関係なしに可愛いからしょうがねぇか?」


僕はいつもの尊の揶揄いはスルーして言った。


「約束ってなに?」



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