第6話 あっくんの話
僕はベッドに横になって、お迎えの時にあっくんが言った言葉を思い返していた。
『…パッと見は違って見えるかもしれないけど。俺が理玖の事忘れるとか絶対ないから。ただ、今みたいに一緒に側に居られなくなるのは、そうかもしれない。…理玖が小さいからしょうがないんだ。理玖だって、俺のこと怖くなるかもしれないよ?」
僕は涼兄とあっくんがもう直ぐ中学生になる事と関係があるのだとわかった。慧兄は確か中学生になって直ぐにバース判定があって、その時慧兄がαだと分かった。父さんの会社の後継だと皆がホッとして喜んでいたのが印象的だった。
確か僕はその時、どこかで聞き齧っていたのか、多分聞いちゃいけない事を聞いたんだ。
『ねぇ、けいにーに。もしにーにがアルファじゃなくて、えーとオメガ?だったら、ダメだったの?』
僕の小さな声は、驚くほど家の中に響き渡った。少し慌てた様な涼兄が僕をさっと抱き上げて、自分のお皿のデザートを僕の口に放り込んだんだ。
僕は直ぐに目の前の美味しいケーキに気が散って、ご機嫌に食べていたんだけど、いつに間にか側に来ていたママが僕の頭を優しく撫でながら言った。
「…ダメじゃないわ。」
僕はママがそう言いながらも困った顔をしてるのを見て、やっぱりちょっとダメなのかもしれないと思ったんだ。あれは確か年長さんだった。
僕は今はまだ小学部二年生で、アルファとかオメガとかはよく分からないけど、あんまり人に気軽に聞いちゃダメな話だってのは分かってきた。
今度悠太郎や尊に聞いてみようかな。あいつらも知らないかもしれないけど。僕はあっくんの大人びた横顔を思い出して、やっぱりあっくんに会えなくなるのは酷く悲しい気がした。
次の日に僕は早速悠太郎と尊に尋ねてみた。
「昨日あっくんがもう僕とあんまり会えなくなるって言ったんだけど、たぶんバースの何とかが関係してると思うんだ。悠太郎とミコトは理由分かる?」
悠太郎と尊は首を傾げて考え込んでたけど、尊が何か思いついた様に言った。
「きっとあっくんはアルファだから、アルファ以外の人間とあんまり仲良くしちゃダメなんじゃない?」
僕は急に胸がドキドキして、喉がぎゅっと締め付けられた気がした。悠太郎が尊の方を向いて何で仲良くしちゃダメなのかって聞いていた。尊は考え込んで閃いたとでも言う様に言った。
「ママの観てるドラマで、確かそんな事言ってた気がするな。」
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