第26話 フロリダでの仕事と生徒を懐かしむ話
フロリダでの仕事。
ひとつは大学の研究室のラボテクニシャン。日本語だと何やろ。研究室の助手みたいな感じ。研究者ではないけど、研究の技術的な手伝いをしてた。組織を薄切りしてスライド作ったりとか。
歯学部の研究室で、わたし日本で歯科衛生士やから、そこの日本人の教授が声をかけてくれて始めた仕事。日本では臨床しかしてなかったから(というか普通はそんな機会ないと思う)めちゃめちゃいい経験だった。
日本では矯正歯科で仕事してて、歯を動かすのに必要な細胞があってそれでご飯食べてたようなもんだけど、まさかその細胞を自分で顕微鏡を使って見る日が来るなんて思いもしなかった。
同僚のみんなも良い人が多くて楽しかった。日本語も英語もスペイン語もいけちゃうすごいお姉さんがいて素晴らしかったなあ。
パートタイムやったけど、子供も小さいしそれもちょうどよかった。しかし引っ越しで半年で辞めないといけなくなった。くそう。もったいない。
2つめは太極拳の先生。当時生徒が2人いた。これも引っ越しで仕方なく辞めた仕事。せめて一通りの套路(動き)を最後までとは思ったけど、結局ふたりとも最後までできなかった。(ひとりはジョージアの友人。わたしより早く引っ越したからこれは仕方ない)熱心だっただけに申し訳ない。フロリダに心残りがあるとするとこれだな。
生徒のひとりだったアンドレは歌手。インディーズってやつで、レコード会社とは契約してないみたい。でもプロ。今どきネットで曲を配信したりYouTubeやったり、インスタのフォロワー二万人超えてて、さらにラジオ番組を持ってたりして。有名人ではないけど、だからってお金に困ってる感じではなかった。たまに雑誌の取材を受けてるらしい。わたしの知らない世界の人で、話するのが楽しかった。思ったよりチャラチャラしてなかった。これは偏見かもしれんな。
ブラックのお兄ちゃんにしては珍しく(なんて書くと差別的かもしれないけど)アジア人への差別心はないみたいだった。むしろ、子供の頃に日本に住んでて、以来ご両親も本人も日本が好きなんだと。好きと言われるとやっぱり嬉しい。
アンドレは大人になってからも2年くらい大阪で住んでたらしい。わたしその頃は大阪じゃなかったから、うっかりすれ違うことはなかったと思うけど惜しいなあ。で、大阪で大阪人とコラボして楽曲作ってたらしく、その頃のYouTube見せてもらった。もちろんイケイケのノリノリ。R and B というやつだと思われる。(よく知らないけどそういやジャンルは聞かなかった)
アンドレは今も大阪に行きたいらしいんだけど、大型ハリケーン・イルマで計画が潰れて、そうこうする間にパンデミックで行けずじまいなんだとか。今はフロリダに居ながら大阪のミュージシャンとコラボして更に新しい楽曲を出してた。ネットで何でもできちゃういい時代やな。
彼らの新しい楽曲の日本語の歌詞の意味を聞かれたんだが(英語と日本語のコラボでもある)、抽象的すぎて難しかった。ていうかアンドレ、それは本人に聞いた方がいいんやないか??笑
写真を見せてもらっただけやけど、アンドレのお母さんは日本から買って帰った日本人形と棚をすごく大事にしてるそう。棚はピカピカに磨いてあった。湿気がすごい地域なのにめっちゃきれい。愛が伝わる。
何人か知り合いとか友達とかできた後の感想としては、やっぱり相手が親日家でないとなかなか仲良くはなれないのかもなあ。特に日本への興味がなくても仲良くなった友達はいるけど、やっぱり日本に興味ある人が多い。アジア人同士でもそういう傾向あるなあと、ふと思った。
日本のアニメが好き、映画が好き、食べ物が好き、取っ掛かりは大抵そういうの。日本が好きなんじゃなくて、日本が作り出したものが好きな人はとても多いと思う。もちろん気が合わないと友達にはなれない。きっかけの話ね。
日本人やから当然アニメのこと知ってると思われがちやけど、わたしよりOtakuの皆さんの方がよほどよく知ってる、てのもよくある。
さて、アンドレとの太極拳教室。わたしはアンドレに太極拳を教えて、時々英語でどう言えば良いか分からなくてアンドレに確認する、というスタイルだった。
教えるのも生徒取るのも初めてやから!不慣れでごめん!ていうのをあっさり受け入れてくれた。アンドレめっちゃ良い人!その分授業料も安くしたんだけど(そういう説明はしなかったけどな)、とてもいい勉強になった。太極拳も英語も。ほんまありがとうアンドレ。
日本語で習ったことを英語で教えるのって、すごく難しいな。しかも習ってたの10年前やし。YouTubeで太極拳を予習復習しながらその英語訳考えてた。
さらにラボでバイトもして、いろいろ経験できて、勉強できて、あの頃めちゃめちゃ充実してた。ほんの半年前なんやけど嘘みたい。くそう、もうちょっと続けたかったぜ。
9/4/22
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