S2-FILE020(FILE221):たまにはカファルジドマもいいよね!
視察が終わったので、虎姫は磯村に休憩してもらうのも兼ねて自由時間をとることに決定した。
その行き先とは、【カファルジドマ】という名のオープンカフェである。
金髪でナイスバディの若い外国人女性が経営しており、くじら座の恒星のひとつからあやかった店名の通り、クジラをモチーフとするマスコットキャラクター・【ジドマくん】まで用意している凝り具合だ。
それだけに人気が高く、知る人ぞ知る名店としてその名が広く知れ渡っていた。
「たまにはここもいいもんだね」
「お誘いいただき感謝申し上げます。さて……剣持さんな、何度か取材させてもらったことあるんよ。記事にまではしてないけどさ」
日傘の下のテーブルで虎姫たちと語らう蜜月は、ここまで来る途中で偶然にも合流しこのカフェまでついて来た次第だ。
今日は気候も温暖だったため、黒のベストの下に紫のワイシャツという軽装である。
虎姫や環と話すときは丁寧に、アデリーンとはいつも通りに――という風に目まぐるしく口調を使い分けていたゆえ、こう見えて蜜月は大変だった。
「そうなのね。記事にしないのは、晒し上げるみたいになっちゃうから?」
「まあね。最初は気まずかったんだけど、「人とおしゃべりする楽しみを思い出した~」って言ってもらえた時はこっちも嬉しかったなぁ……」
胸いっぱいだ、という表現をしたいためか抱きしめるような仕草とともに蜜月は振り返る。
それだけ剣持とは親交も深かったという証拠であった。
「もしかして、ミヅキの彼氏だったかな?」
「なぁ~~~~に言ってんだ。交際を前提としたお付き合いなんかしてないよ!? 彼とはお友達なだけだゾ! マヂで!!」
「お土産はジドマのクッキーとインスタントでいいか……」
アデリーンと蜜月が語らっている横で環は微笑み、虎姫はテラスから店内に移動。
率先して社員たちへ買って帰る洋菓子などを選んでいたところだ。
別にのろけ話に呆れて、聞いていられなくなったとかそういうわけではない。
「あっ。
そこでスマートフォンが着信したため、アデリーンは話を途中で切り上げて確認を取った。
かけがえのない友人のひとりからだ。
「……レイネっちゅ~と、
「そう、レイネ・シガラキノミヤ。コウイチロウ博士の助手の娘さんだから、付き合いも長いの」
メッセージを確認し、その玲音へと電話をかけてみる。
蜜月だけでなく、土産物を買い終わった虎姫と環も彼女を見守っていた。
「もしもし、私よ。アデリーン。今カファルジドマってカフェテリアなんだけど、そっち行ったほうが良かった? ええ、うん。じゃあ、また今度。お互い首がつながってたらね」
通話を終えたアデリーンは、嬉しそうに笑って周囲を不思議がらせる。
とくに蜜月は、これまでとはまた違う顔を見せた彼女に驚かされていた。
「その……めちゃめちゃラフっつーか自然体でさ?」
「スレてる女のよーに見えたのね? ふふふ、私は案外そんな女よ」
「でも
「やだー、タマキさん……♪」
さりげなく明かされた衝撃の事実――だったのかは、彼女たちだけが知る。
それからカファルジドマを出て、場所をアミューズメント施設へと移したが、更に2時間ほど盛り上がったという。
◆
その頃、おとずれ荘にて――。
「よ、よっしゃ。おれにしちゃあ、結構片付けられた気がする! ご飯にすっかな……」
散らかっていた物を片付けることができた青年・剣持はガッツポーズをして、自分を褒めて鼓舞する。
そんな折、唐突にインターホンが鳴って来客を知らせたのだ。
「え? こんな時間に誰だ?」
もしも、隣人や宅配業者などをよそおった不審者だったとしたら?
少し不安になった剣持だが、勇気を振り絞り玄関へ移動して、ドアを開く。
「どちら様…………!?」
「こんにちは」
外で待っていたのは不敵に笑う怪しい2人の男女であり、剣持の表情から生気が失われ凍てついていく……。
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