お母様 ②

 二つ目の試練が終わり次の日の朝。


「お母様。今日も二人が着てくれましたの」

「あら、いらっしゃい」

「おはようございます」


 私とアレクシアは同時に挨拶をした。私達はお母様に会いに来た。今日は私が試したいことがあったからお姫様に言って一緒に来てもらったのだ。


「お母様、一つ質問があります」

「何かしら?」

「お母様の病を治す薬草の事です。一昨日は錬金術では生命があるものは作れないと言っていました。では、錬金術以外の魔法とかけ合わせればどうなりますか?」

「何をするつもりかしら?」


 私が昨日の試練で思いついたこと。それは錬金術と別の魔法をかけ合わせて錬金術の幅を広げられないかというものだ。昨日の試練で私は闇の魔法の試練のために錬金術を使った。なら、錬金術のために別の魔法を使えば錬金術で命があるものも作れるのでないか。そう思った。

 その話を皆にした。話を聞いたお姫様とアレクシアは固まっている。まだ理解が追いついていないのだろう。


「でも、命にかかわれる属性は光属性だけよ。希少属性持ちなんて、そう簡単にいるわけないじゃない。まさか、エマがそうだとでもいうの?」

「いいえ、私は違います。でも、隣のアレクシアはそうです」

「そんな、なら本当に?」

「薬草の情報、もらえますか?」


 昨日アレクシアは花を咲かせた。それなら薬草の種を作ってそれをアレクシアが育てれば薬草が完成するのではないか。


「分かったわ。期待していいのね?」

「出来る限りのことはします。保証は出来ないですけどね」

「資料の場所を教えるわ」


 私は資料が置いてある場所を教えてもらい取りに行き、資料を持って部屋に戻ってきた。部屋ではお姫様が泣いていた。


「お母様は本当に治るのですか?」


お姫様が少し震えた声で聞いてくる。


「やるだけやってみるよ。失敗しても怒らないでね」

「そんなことしませんの。少しでも希望があるのなら試して欲しいですの」

「分かった。アレクシア、出来る?」


 アレクシアはまだ固まっていた。私が声をかけたところでやっと戻ってきたようだ。


「ボ、ボクが失敗したらお母様は治んないんだよね」

「緊張しないで、落ち着いて」

「でも、失敗したら、ボク」

「やる前から失敗することを考えないの。私達がやらなきゃお母様は治らないんだよ」

「そうだよね、うん。ボク頑張るよ!」


 アレクシアもやる気になったところで一緒に種の情報を確認する。少し難しいけど理解できない程ではない。私は理解できたけどアレクシアは無理だったようだ。精神面で私を支えてくれたりして忘れかけているがアレクシアは8歳だから無理もない。

 私がメインでアレクシアが手伝う形でやることになった。二人で手順を確認して準備をする。


「二人で魔法をかけ合わせることは二人の息が合わないとできない難しいこと。失敗しても文句は言いませんわ」

「大丈夫だよ、ボクとエマだもん」

「そうだね。じゃあ始めよっか」


 私はアレクシアと手をつないで錬金術を使った。手からアレクシアの光の魔力が流れてくる。私はその魔力を錬金術の中に流し込んでいく。

 確かにこれは難しい。流れる水の中に変なものが混ぜられるような違和感がある。でもこの違和感はアレクシアのものだ、落ち着いて感集中すればアレクシアが私に寄り添おうとしているのが分かる。少しずつアレクシアも私に合わせてくれている。私とアレクシアの魔力の光が重なる。


「きれいですの……」


 お姫様が何か言っているのが分かるが集中しすぎてその内容まで頭に入ってこない。私とアレクシアの魔力が一つになった。私は魔力をそのまま形にする。


「これ、薬草の種で合ってます?」


 私は手の中の物をお母様に見せた。お母様はその種を受け取ってしっかりと確認する。


「これ……これだわ。二人とも、ありがとう」

「どういたしまして」

「へへ……やったね」


 私とアレクシアはお互いを見て笑いあう。少し疲れたが成功できた充実感を共有した。お姫様が私達二人まとめて抱きしめてきた。お姫様は私達より背が高いのですっぽりと覆われる。


「エマ、アレクシア、ありがとうございますの。二人はワタクシの恩人ですの」


 私とアレクシアはお姫様の腕の中でもう一度笑いあった。お母様の助けになれて本当に良かった。


「お姫様、まだお母様は治ってないよ。アレクシア、仕上げ頼んだよ」

「うん!」


 薬草の種をアレクシアに渡してもらって家の外に出る。近くの土に種を植えてアレクシアの魔法で育てた。綺麗な深い緑色の葉っぱが出来上がった。その薬草を持って再びお母様のいる部屋に戻る。


「他の素材はあるんだよね。後はどうしたらいいですか?」

「そうね、長老を呼んできてもらえるかしら? あの方なら薬を作れるわ」

「ワタクシが呼んできますの」


 お姫様が部屋を出ていったので、私達はおじいちゃんが来るのを待つことにする。


「改めて、ありがとうございます。もう娘の成長を見られるのもあと少しだと思っていたので、娘が大きくなるところを見られそうで本当に嬉しいです。あなた達は恩人です。私が回復したら何かお礼をさせてください」

「ボク達がやりたくてやったんだから、お礼なんていらないよ」

「そうですよ。どうしてもと言うならこれからは元気な姿をお姫様に見せてあげて下さい」

「本当にいい子達ね。言われなくてもそのつもりだわ、だからお礼は別の形で勝手にやらせてもらうわね」


 お母様は何としてもお礼をしたいと言う。私達のそこまで言われたら何も言えない。大人しくお礼をされることにした。しばらくしてお姫様がおじいちゃんを連れて戻ってきた。


「戻りましたの」

「姫から話は聞いた、良くやってくれたのじゃ。後はワシに任せるのじゃ」

「よろしくね、おじいちゃん」


 アレクシアは薬草をおじいちゃんに渡した。これで私達の役目は終わりだ。後は試練に集中しよう。


「ここまでされたらもう良いじゃろ、試練は合格とする。精霊との契約を許可するのじゃ」

「合格?」

「やったよ! エマ!」


 いきなりだが私達は試練に合格することが出来た。二つ目の試練しかまともにやっていない気がするが合格と言われたからこれでいいのだろう。後は、


「どの精霊と契約するかだね」

「ふふん! それならワタクシを……」

「何を言っておるのじゃ? エマにはもう精霊がおるじゃろう」


 ……え?

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