第4話 旅配信

「ふっ!」


 ギャウッ!?


 俺は剣を振って、商品を積んだ馬車を狙って襲ってきたモンスターを倒していく。そんなに強くなかったので、あっさりと仕留めることが出来た。だけど。


「くそっ!」

「こいつッ!」

「後ろ、気をつけろ!」

「わかってる!」


 もう一組、同行しているパーティーが苦戦していた。彼らは冒険者だった。だが、まだ冒険者でもない俺よりも弱く見える。


 聞いた話によると、そこそこ実績のある冒険者パーティーらしいのだが。


「そっちは大丈夫ですか? 助けが必要ですか?」

「ぐっ! す、すまない! 手を貸してくれ」

「う、うわっ! は、早く、頼むッ!」

「わかりました」


 戦っている最中の男達に問いかける。かなり苦戦しているようなので助けに入る。ちゃんと彼らの許可を得てから。


「ふっ、はっ」


 ギュアッ! ガウッ!? ギギャァアッ!


「す、すごい……」

「あのワーウルフを、そんなにあっさりと!?」

「た、助かった……」


 馬車を襲ってきたモンスターの群れを次々と倒していく。その様子を、実は配信で垂れ流していた。


【俺tueeee!】

【その男達が弱すぎるんよ】

【ほんとに冒険者か? そんなんで大丈夫なのか?】

【テオが居なかったら、商隊が全滅してたかも】

【戦力を見誤ったな】

【いやいや、そんなに弱くないでしょ。テオの強さが異常なだけで】

【その冒険者達も時間をかけて、じっくり戦ってたら負けなかったと思うな】


 戦闘の様子を見て、視聴者たちが様々な感想を書き込んでいく。画面にコメントがバーッと流れていく。それを横目で見ながら、商人の対応もする。


「助かりました、テオさん! いやぁ、貴方が旅に同行してくれたおかげで、積荷の商品を捨てて逃げずに済んだ! 本当に感謝します」

「あ、はい」


【テオの返答薄っ】

【コミュニケーション能力に難あり】

【田舎でボッチ暮らしが長かった弊害が出たな】

【今だ報酬を釣り上げろ!】

【働いた分の金ぶん取っちまえ】

【無能の冒険者パーティーよりも働いているテオが報酬を受け取るべき】


 旅に同行してくれて助かったと喜ぶ商人。王都を目指して旅する俺は、商隊を守る仕事を請け負っていた。ただし俺は、冒険者ギルドを通していない仕事である。まだ冒険者じゃないから。少し安めの賃金で雇われていた。


 商隊の正規の護衛は、もう一つの冒険者パーティーである彼らだった。俺は予備の戦力のはず。それなのに、俺のほうが活躍してしまっている。ちょっと問題か。力を抑えるべきかな。


 その後、王都へ向かう道中で何度かモンスターと遭遇した。相変わらず、主に俺が戦うことになった。護衛仕事は大活躍だった。そこで見捨てるわけにもいかないし、無理しない程度に戦闘を続ける。


 正規の護衛だった冒険者パーティーの観察するような視線。じっと見られているのを感じつつ、旅の間は気にしないふりを続けた。険悪な雰囲気にならないよう注意をしながら、旅の間は彼らとの薄い付き合いを続けた。





「今回の旅は、テオさんに助けられました。なので、多めに報酬を払っておきます。ありがとうございました。また機会があれば、よろしくお願いします」

「はい。ありがとうございました」


 予定通り王都に到着した俺は、雇われた商人から多めの報酬を受け取った。


「さて」


 護衛の仕事が無事に終わって、次はさっそく冒険者の登録をしに向かおうか。そう考えていると、旅に同行していた冒険者パーティーのリーダーが話しかけてきた。


 仕事は終わったから、さっさと別れたかったんだけど捕まってしまった。


「いやぁ、本当に強かったなテオくん。まだ若いのに、その強さは驚いたよ」

「今回の旅、君がいなければ失敗していただろう。感謝する」

「よかったら、俺たちのパーティーに加わらないか? 冒険者のこと、色々と教えてあげられるぜ。これから登録しに行くんだろう? 案内するよ」


 パーティーに加わらないかと勧誘されてしまった。不用意に活躍しすぎてしまったかな。言われている通り、まだ冒険者になっていないのに。


「あ、いえ……」


 なんと言って断ろうか、困ってしまった。


【こんな弱いパーティーに加入しても無駄でしょ】

【時間の無駄だろう】

【断れ!】

【断って、もっと良い相手を探そうぜ】


 コメントは辛辣だった。ほぼ全ての視聴者たちが、パーティーの勧誘には否定的である。彼らが弱かったから。それから、男だけのパーティーだからという理由もあるのだろう。視聴者は女性を求めている。


 俺も、今は加入するべきじゃないと強く感じている。だから断らないと。


「申し訳ありませんが、しばらく一人で頑張ってみようと思います」

「そうか、残念だ。また気が向いたら、一緒に仕事をしてくれ。基本的に俺たちは、この街で活動している。だから、いつでも歓迎するよ」

「はい。それでは、また」


 引き留めようとする彼らに、キッパリと別れを告げる。そして俺は、冒険者ギルドがあるという建物へ向かった。


 これから冒険者として活動するため、登録しに向かう。

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