二章

第32話心機一転の休話

 指を絡める手の握り方。

 所謂恋人繋ぎと言うのをやっている。

 俺は昔に雪姫こと、雪と会っていた。

 そして、俺は雪に対して灰色の世界を見せない事を約束したんだ。

 初恋の相手で、大切にすると、会いに行くと決めた相手。


 毎日同じ内容の日記を書いて、その日の思い出を忘れないようにしていた。

 しかし、忙しく成ってからそれすら忘れて、雪と言う存在を忘れていた。


 夜空を見ながら帰っていると、雪が口を開いた。


「たっくんとこうやって手を繋ぐと、心臓の鼓動が速いです」


「俺もだよ」


 雪との事を思い出し、これまでの事を思い出すと、雪に対する思いってのが凄く高まる。

 俺達の生活はあまり変わらないだろう。

 だが、俺と雪の関係は大きく変わっているだろう。


 家に帰ると、凛桜が声をあげる。


「な、何ですか! そのベタベタ感は! 西園寺雪姫! 伊集院君から離れなさい!」


「嫌ですよ。私とたっくんは本来はこう言う関係何ですよ。これが、私達何です」


 さらに腕を絡めてくる。

 崩れ落ちる凛桜に愛桜が寄り添う。

 肩に手をおいて、ボソリと言う。


「姉貴、完全敗北。諦めや」


「嫌よ。絶対に」


「⋯⋯」


「⋯⋯お兄ちゃん、雪姫⋯⋯お姉さん。おかえり。ご飯出来てるし、食べよ」


「愛海さん!!」


「勘違いしないでね! 別に認めた訳じゃないから! ただ、お兄ちゃんが認めたからそう言ってるだけだから。もしも、お兄ちゃんを傷つけたら、許さないから」


「愛海さん(もしかしてツンデレ?)。安心してください。私はたっくんを傷つける事は無いですよ。私はたっくんの隣にいます。寝る時も、お風呂の時も」


「それはアカン!」


俺。


「絶対に許さない!」


愛海。


「⋯⋯」


「姉貴⋯⋯」


「て、たっくんって何よ!」


「姉貴に戻った」


 晩御飯を食べながら俺はとある事を思う。

 何かを忘れているような、そんな感じがする。

 誰だろうか。


「たっくん、あーん」


「雪姫お姉ちゃんだいたーん」


「雪姫お姉さん! 馴れ馴れしいですよ!」


「伊集院君、私のを!」


「あはは。賑やかな食卓っすね。天月ちゃんは食べへんの?」


「あ、私は従者ですので」


「立派やな」


 あまり変わらない生活、の筈。


 そして、麻美が突然と言葉を出す。


「おぼっちゃまはどう致しますか?」


「おぼ⋯⋯雪鷹さん!」


「ああ、お兄様なら放置してください」


「良いんですか?」


「ええ。たっくんに会う前は何も感じなかったんですが、感情を感じるようになったら、気持ち悪くて、苦手なんですよね。キモイし、うざいし、キモイし、気も悪いし」


 めっちゃ言いますやん。

 ま、俺は連絡先とか知らないし、雪の判断に任せる事にする。


 風呂に入っていると、ガチで雪が入って来た。

 タオルも巻いておらず、産まれた姿を俺は記憶に焼き付けてしまった。

 顔を赤らめていた雪の顔も。


 途中から入って来た愛海達に寄って戻されていた。

 冷静に成ってから俺は風呂から出た。


 ベットで横に成っていると、背中に柔らかい感覚が伝わって来る。

 ムニムニと動くそれ、まぁ誰かは一目するまでもないな。


「雪、何で居るの?」


「ずっと隣に居るって言ったじゃないですか。だから、寝る時は一緒ですよ」


「だけどなぁ」


 俺達、高校生だしな。

 雪を雪として認識すると、寝れそうにもない。

 だから、流石に隣で寝るのは、無理そうなんだが。


「たっくんの匂い〜」


「なんか、一気に変わったね雪」


「元々の私はこんなんですよ。繋げていた鎖を壊しただけです」


「だけど、流石に高校生で⋯⋯」


「私は、良いですよ。たっくんなら」


「ッ!」


「な〜にしているのかな〜雪姫お姉〜さん?」


「お姉ちゃんどうして起こしたの〜眠い〜。って! お兄ちゃまと雪姫お姉ちゃんが一緒に寝てる!」


 ドン! と大きな音がドアの向こう側から聞こえた。

 ピンク髪を揺らしてドアの前に立つのは桜井凛桜。


「な、ななな、何してんのよ! 西園寺雪姫えええ!」


「永遠を共にする人と寝ているだけですよ〜」


「それが何をしているのよって言ってんのよ!」


「待って! 姉貴! 右手に力を込めないで! 右手にはうちが居るよ! 止めて、投げないでー」


 愛桜が投げられる。

 なんて腕力だ。


「姉貴のゴリラああああああ!」


「ごふ」


 愛桜に激突された俺は倒れる。

 脳が激しく揺らされて、俺はそのまま暗闇に眠る。


 ◆


「どこだあ! どこに居るんだ! 俺のマイスイートハニー! 雪姫ええええ!」


「あー、そこのお兄さん」


「なんだ! 警察がこの俺に何用だ!」


「何用って、もう深夜の1時だよ。そんな街中を大声で奇声をあげながら動き回る人が居たら誰でも通報するでしょ」


「俺はマイスイートハニーである雪姫を探しているんだ! 邪魔するな!」


「それこそ警察である我々に相談するべきじゃない?」


「貴様らは信用ならん!」


「酷い言われようだね(イライラ)」


「ふん。貴様らのようなくだらん奴らに従うつもりは無い」


「近所迷惑は考えなよ」


「確かにそうだな。下の者の手本と成らんのは上の者がやる事じゃない。一度帰るとしよう」


 ◆


 目が覚めると、部屋がめちゃくちゃだった。


「お目覚めですか、拓海?」


「愛桜、何があった?」


「一言で言えば、地獄。腰が抜けて立てないので手を貸してくれませんか?」


 俺の横には雪と愛海、安全圏に布団を広げて寝ている海華、雪の足元に凛桜。

 愛桜は壁にもたれて座っていた。


「雪姫穣も姉貴も武術家だったんすね」


 遠い目をしてらっしゃる。


 俺は愛桜に手を貸して、立ち上がらせる。

 その際にバランスを崩して俺にもたれ掛かる。


「「「んじゃあらあ!」」」


 変な叫びを上げて、雪、愛海、凛桜が起き上がる。

 俺はベットに愛桜を座らせて、3人に近づく。


「おはよう三人とも」


「たっくん〜」


「お兄ちゃん〜」


 雪と愛海が俺に抱き着いて来る。

 凛桜も抱きつこうとして来たが、俺がジーと見ていたら、目が覚めたのか、顔を赤らめて頭を高速で下げていた。

 愛桜は海華を起こしていた。


 そして、俺達は皆でキッチンに向かって朝食を作りに向かう。

 料理人が居るけど、俺達は俺達で作るようになっている。

 愛海が料理好きなのだ。


 料理人は自分達や使用人用の料理を基本的に作っている。

 廊下の途中で、とある人物と出会う。


「ゲッ、お兄様」


「あぁ、雪姫、会いたかったよ! おいコラクソガキ、俺の雪姫に近づくなって言ったよな」


「お兄様、帰ってください」


「え」


「たっくんを悪く言う人は誰であろうと嫌いです。敵です。帰ってください。もう、私の前に現れないでください」


「そ、そんな。何が、あったんだ」


 それから、雪鷹は帰って行ったが、俺に向かって『認めないからなあ!』と言って来た。

 仕事に戻るらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る