第12話 修正【完】
放課後、拓海と雪姫を物陰からストー⋯⋯見守っている
学園ではカワイイ系のトップとされ、学園のアイドル、マドンナのような人である。
「姉貴ーストーキングなんて良くないよ」
そんな女子高生に話しかけるのは双子の妹、新聞部で、同じく桜色の髪の毛を持つ、
「ストーキングじゃないし。見守っているだけだし! そんな犯罪行為のような言い回し止めてよ!」
弁明を測るのは例の女子高生、
「姉貴、世の中それをストーカーって言うんっすよ。それに、姉貴なら彼氏なんて何百人も出来るでしょ」
「それはそれでどうなのよ! それに、一卵性双生児なんだから見た目は同じでしょ!」
「性格が違うのよ。それに姉貴と違ってうちリア充やし」
「ぐぬぬ」
「それにどうして姉貴があの冴えない男に固着する理由がわからへんは」
「伊集院君は冴えなくないよ! あの人は私の事を1人の人として見てくれるんだよ。どんなイケメンだろうと、中身は薄汚い欲望の塊⋯⋯だけど、あの人は違ったのよ!」
(はぁ、めんど)
拓海と雪姫が仲良さそうに喋りながら移動している。
見ている限り完全に仲のいいカップルだ。
「そもそも何処が好きになったねん。あと、どうしてこんな奇行に走ったのか理由もよろ」
「好きになったのには長い経緯があるの。まずはマッ〇で優しくお釣りを渡してくれたんだよ」
(クレジットにしろよ)
「男の人ってその時に手とかベタベタ触って来るけど、伊集院君は違ったの!」
(逆に触りたくないから触られなかったってゆう解釈も出来るな)
「それに、落ちたハンカチを拾って渡してくれたり、自動販売機の下に小銭が落ちて困った時に助けて貰ったり⋯⋯」
(それで惚れたら姉貴チョロインやねん)
「他には、気持ち悪い男共にナンパされた時に助けてくれたり、上から鉄の棒が落ちて来て動けなかった時に助けてくれたり、通り魔に刺されそうになったのを助けて貰ったり⋯⋯」
(姉貴どんな目にあってんねん。よーそんなタイミングで伊集院とやら居ったなラッキーやねん。それで惚れたら吊り橋効果とか言われそうやねんな)
「でも姉貴、完全にあの二人付き合ってますやん。姉貴入る隙間1ミリもありまへんよ」
「そう。それが今回伊集院君を後ろから見守ると決めた理由なのよ。学校の方で伊集院君がどっかの馬の骨とも知らないビッチと付き合ったとか、そんな噂が立っているから調べる為にね!」
(姉貴、姉貴の素ってまじで怖いわー。これがクラスメイトに知られたら友達無くなるだろうなー。見た目完全に清楚系だし、ビッチじゃあないだろうなー。アホくさ帰ろ)
「帰らせないよ! それでも帰るって言うなら、足の骨数本覚悟してね」
「ほら、移動しましたよ姉貴。行きましょう!」
2人は2人を追う。
◇
傘専門店に向かって2人で歩く。
途中途中で見つける物に色々と話す。
まだ1ヶ月も過ごした訳では無いが、それでも分かる事がある。
俺と西園寺はかなり価値観が合う。
だからだろうか、本当によく会話が弾む。
クラスメイトなんてあんまり見てなかったから、西園寺の昔の姿と言うモノを知らない。
過去の話も知らない。幼い頃の記憶もあやふやだ。
でも、知ろうとも思わない。
俺にとっての西園寺は今の西園寺だから。
傘を1本手にとって、開く。
上に掲げると、中に西園寺が入って来て近くに近づく。
「(ぅー隣に腕があるのに、腕に絡ませたいのに、勇気がでにゃい)」
「このくらいの大きさで良いかな。色は何にしようか?」
「そこのお熱いお二人さん。こんなのはどうかね」
店員のおばあさんがそう言って1本の傘を差し出して来る。
俺達、第三者から見たらやっぱり恋人に見られるのだろうか?
おばあさんが差し出して来た傘を広げると、深振りの傘だった。
おばあさんが西園寺の耳元に口を近づけ、手で隠す。
何か話しているようだけど、俺には聞こえない。
「これなら雨の中、外からは見ら難いですよ。なので──」
「⋯⋯ッ!」
西園寺の顔が少し赤らみ、頭から湯気を噴射する。
おばあさん。何を言ったか聞かせろおおお!
西園寺に何吹き込んだから洗いざらい吐けええ!
「拓海君」
「はいなんでしょう」
「これにしましょう」
「⋯⋯浅振りの傘ってありますか」
「ありません(ダウト)」
絶対嘘だろ。
だけど、この西園寺の期待を込めたキラキラとしたこの目。
海華の姿が脳裏に浮かぶ。
なんか、怖い。この傘を買う事を本能的に拒否している。
どうする。考えろ。
西園寺の期待に応えながら、この本能的拒否感を抑えられる最前の策を考えろ。
どうする?
「では、2本買います」
「2本もありません」
「それぞれで使うので色違いで良いですよ」
「⋯⋯ありません」
「では、自分は標準の形で良いです」
「ありません」
「さっき持っていた傘で良いですよ」
「⋯⋯」
俺の勝ち!
と、言う訳で西園寺は元々傘を持っているとの事で、1本と折り畳み傘を2本購入して帰路に付いた。
道を進んで、人かが無くなった時に西園寺は止まった。
急に止まった西園寺に合わせて止まり、西園寺に向き直る。
「どうしました?」
「いえ、さっきから2人程追い掛けて来る人が居るんですが、どっか行ったようですね。帰りましょう」
「そうですね。愛海や海華も待ってるし」
「むー、私と2人っきりの時でも愛海さんや海華ちゃんの事ばっかりですね」
少しプンプンし始めた西園寺を隣に、俺達は屋敷へと帰った。
◇
「あ、焦ったー。あのビッチは忍者か。どうして気づいた!」
「その呼び方止めなさい恥ずかしい! はぁはぁ。てか、最近噂されている西園寺やないかい。男の方の名前興味なくて忘れとったわ」
「知ってるじゃん」
「知ってるも何も西園寺グループは家のライバル財閥やん」
「ええ。そうね」
「ダメだ。姉貴に勝ち目ねぇ。完全敗北、負けゲー、姉貴諦めろ」
「なんで!」
「姉貴の性格悪いし、あっちがクール系がタイプなら勝ち目ねぇし、金銭的な面でも同じやん? 姉貴を選ぶ必要ないやん?」
「がーん!」
「ま、最近噂が広まって学級全体に広まったことやし、新聞部として調べて見ますわ」
「ストーカーじゃん」
「姉貴ちゃうわ。それに、うちらの学園に通っとるちゅーことは西園寺、雪姫やろ? カップル云々興味ねぇーけども、西園寺雪姫の事は興味津々ね。ついでにあの男の事も調べてみるは」
「ありがとう愛桜! 持つべきは優秀な妹ね! 伊集院君の好きな食べ物やタイプとか知ったら教えてね」
(それうち職権乱用にならへん?)
愛桜の手を握り、キラキラの目を向ける凛桜。
(西園寺雪姫。裏情報通りに1人だけこっちに来てたんやな。いやーもっと色んな所に目を向けるべきやったな。今更気づいは。今後が楽しみやなー)
「姉貴、ストーキングはこれからはすんなや」
「してないし!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます