逆転世界で配信者(練習)

やまいし

第1話 始まり



「えっと………こんばんはー。聞こえますか? 」



日曜日の18時55分。

週末のゴールデンタイムとも言える時間に俺こと成瀬和也なるせかずやは、画面に向かって語りかけていた。


コメント

:?!

:?!

:えっ?!

:……は?

:う、うそ……

:お、男……



ちなみに今日が初配信である。



念のため配信者は簡単に言うと様々なことを動画として視聴者に届けたり、ゲームや雑談を通じて楽しい時間を視聴者に提供する職業のことを指す。



「おっ、ちゃんと聞こえてるな…………えっと、今枠を立てたんだけど……配信自体は19:00から始める予定なのでよかったら待機してくれると嬉しいな」



俺は初配信前最後の準備に入った。

……こういった人前で何かする経験に乏しいから緊張するんだよね。慣れないとな。



配信者は今や多くの人にとって憧れの職業。そしてそれは俺にとっても例外では無かった。

彼ら彼女らの楽しそうに配信するその姿に魅せられていた。



しかし、多くの人が考えるほどらくで楽しいだけの職業でも無い。

打ち合わせ、企画、イベント、ノルマなど様々。

さらには同業者やファンと上手くいかない事も……。


が、それも含めて俺は配信者という職業に憧れていた。

そして何の因果か2こうして配信者としてスタートすることが出来た。

なら思う存分挑戦するのみだ。



……と、そんな思考をしながらデスクトップを見る。

そこには既に、目で追えない速さで流れる沢山のコメントがあった。


コメント

:見た見た?!今の表情!!そして口調! 

:え、やば……尊い……尊すぎる……

:お、おおお落ち着け私!!落ち着け私!!

:男子……男子……ギュフフフフ……ギュフフフフ……

:た、た、た、待機っ!します!!!

:ああ……どうやら私はこの日のために生まれたようだ……

:ツブヤキ(SNS)から来たけど……本当に男子がいた……リ、リツイートしなきゃ!!

:スクショスクショスクショスクショスクショスクショ


そして凄いことになっていた。主に内容が。

……ま、まあ、皆が喜んでくれるなら嬉しいけどさ。


ただそれにしても、配信者の立場から改めて視聴者のコメントを見るとなんか色々と凄いんだよな……。

こう、、、上手く言葉に出来ないんだけどさ、嬉しいような恥ずかしいような引くような……。


たまにこれが苦手で配信者を辞めたって話を聞いたことがあったけどわからなくも無いな。

書き込む側は考えてからコメントを打つようにしようね!!


まあ……セクハラコメント打ち込み経験のある俺が言えた義理じゃ無いけど。



閑話休題。



さてここで、何故今日が初配信の新人がこんなにも騒がれているか。

人気事務所に加入しているならわかるが俺は入っていない。正真正銘の新人である。

――では何故か? 


それは、俺がだということに関係している。


別に男性は配信者として活動をしていけない等の決まりは無い。

だが仕事、ましてや配信者のように人前に出るような仕事はしない方が常識なのだ。

――なぜならは女性が主体な社会だから。


例えば総理大臣はここ何百年と女性だし、内閣もとい国会議員は全員女性が担っている。

また医者は殆どが女性であり教員も同様。警察や消防士などの公務員もほぼ女性である。


希にこれらの職業に就く男性がいるらしいがそれは極々一部の例外だ。


そしてこのような背景には、この世界の男性の数が女性に比べて圧倒的に少ないことが影響している。

女性がより男性を求めるようになり、反対に男性は女性を避けるようになっていったのだ。

そのため時が経つに連れて事態はより深刻化していき、現在のような状態になってしまったらしい。

ソースはネット。


そんな中配信者を始めようとしている俺は当然ながら普通の男では無く別世界の人間だったりする。

まさしく異世界転生とか異世界転移とかだ。


だが残念なことに詳しいことは何もわかっていない。ある朝起きたら突然この世界にいたからだ。

けどまあ別に気にする必要はないと思ってる。今更どうしようも無いし。

それに俺は女性が好きだからな。モテなかった俺にとっては未練など一つも無いのだ。


そして言うまでも無いが、”女性にチヤホヤされたい”という願望を叶えるために配信者を始めた訳だ。


あ、あともちろん、女性が男性とコミュニケーションを取れる機会を作るためだぞ。本当だぞ……?



――――――


――――


――


う、うるさい!! 自分に正直に生きるって決めたんだよ!!


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