私
お茶の間ぽんこ
No.1「大学生シンデレラタイム」
大学生活でお世話になった京都に戻った。後輩たちに会うためである。
正午から後輩を呼び出し、京極スタンドに赴き、縁切神社に赴き、立ち飲み屋に赴き、木屋町通にある安居酒屋に二軒赴き、鴨川デルタでビールかけを洒落込み、宅飲みを興じた。もはや、文章からも酒の匂いがしてきそうである。
私は社会人という身分を忘れて大学生に成り下がることができたのである。これをシンデレラタイムと名付けよう。そうなると私は酒に溺れたシンデレラとなるがそれも悪くない。
ここで重要なのが、大学生の後輩たちに囲まれていた為に、私が大学生気分を堪能できたということだ。
社会人同士で大学生のような振舞いをしたところでどこか虚しい。というより、ただの酒カスの所業とでも形容するのが良い。
しかし、ここに現在進行形の大学生を投入することで、大学生身分が伝播し、私までもが大学生となるのだ。異論は認めない。
そして、先輩と後輩の関係が付随するのが殊更に良しとされる。過去の栄光を想起させてくれるのだ。社会人と大学3回生の事実が、大学4回生と大学2回生の思い出によって上書きされる(ここは一番思い出深い頃を想起していただければ問題ない)。
そうは言うものの、メリハリは大切だ。奢るときは社会人の威厳を見せつけるため、堂々と豪快に躊躇いなく一万円札を叩きつけていった。矜持のためには厭わない。払った金額など後々一人で勘定して後悔する必要はないのだ。合計六万円也。
酒宴中では、エタってしまった拙作「この大学青春モラトリアムはR-陽キャ指定(陰キャ禁)である〜拗らせ陰キャは悩殺女子部員を攻略する〜」に登場した明神池真理子を想起させる絡みを披露し、後輩達を当惑させていたことだろう。
逢引前の顔知らぬ後輩を呼び出して熱燗漬けにし、突如ビールをかけたいと発言してビールによって洒落た衣服を汚し、吐くとは無縁の愛しい後輩をシンガポールのキメラに変貌させたりと、私の罪状は流刑にふさわしい。
そして私が大学生に戻れるのは、私と仲良くしてくれる後輩が卒業する迄となる。私は再び大学に入学するつもりはないので、本当のシンデレラタイムは実はあと一年だったりする。
終わりがあるのは嘆かわしいが、時間というのは刻々と過ぎ去るものなので、残された機会を目一杯享受しようと考えた。
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