爪に毒花

 爪に毒花


十三歳の爪に花が咲いた

不似合いな色合い

紫が薄っすらと春色がかった

少し毒を含むような


六歳から

アトピーに毒されている

掻きむしっては

薬も合わなくなる


皮膚科での医師

何番目の子だ

いきなり叱られた

胸に毒が来る


母親が塗るように

全身隈なく

きちんと塗り込みなさい

串刺しの毒が押し寄せる


バレーを習いたい娘

よくよく考えなさいとパパ

好きなことをさせたいママ

心の毒を晴らしたい


レッスンは長時間行われる

汗とウエアにタイツがいけない

アトピーが毒化した

花が咲くように体が紅くなる


薬を塗る

鬼母も毒化

石鹸人形みたいに

つるつるにしているのに


十一歳の或る日

バレーを辞めた

学校も毒の日々だった

丁度緊急事態宣言の直前に


彼女の爪は白くなった


春めいて染め行くのは

十三歳のキミだ


 いすみ 静江✿

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る