夢心地
大学病院、特別棟十七階。私は、人工呼吸器をつけて眠り続ける彼を見下ろす。
「コイツね、私達を殺したいほど憎んでいたんだ……」
私の隣で、新人メイドの卯月も欠伸をしながら彼を見ていた。震えている私の右手を優しく握りながら。
「随分と彼らには酷いことをしましたからね~。門番の殴る蹴るに始まり……。彼の父親を自殺寸前まで追い込みました」
「…分からないの。教えて…卯月……。彼はどうして……私を助けてくれたの? ……わたし、どうしても分からなくて………。分から…なく……て」
この止まらない涙に戸惑いながら、卯月に抱きついた。
「ーーーそれはきっと、憎しみより、お嬢様を助けたいっていう彼の優しさが勝ったからでしょう。たまにいるんですよね~、こういうバ………輩が。まぁ、残念なことに彼らのほとんどは、神華のような強者に搾取され続け、不幸な死が待っています」
「彼に何か恩返しがしたいの。彼……何が、欲しいかな。お金? 家? それとも……」
「う~ん。彼は、私達から何も受け取らないでしょう。つまらないプライドが邪魔して。………さぁ、そろそろ時間なので帰りますよ? あんまり帰りが遅くなると私の嘘がバレて、旦那様に叱られてしまいます」
「また……ここに来てもいい?」
「ダメです! 旦那様にバレて、厄介なことになります。今日の面会も私の独断ですし。あまり、困らせないでくださいよ。はぁ………」
「わたし、決めた。将来、彼と結婚する」
「アッハハハハ!! 三大財閥。世界を裏で操る神華のご令嬢が、借金まみれの町工場。ダメダメ親父の息子と結婚ですか?」
「もう決めたの!! だからね、卯月。私達の結婚を全力でサポートして。……お願い。邪魔する者は、全員排除して構わないから」
「…………承知いたしました。私、卯月。彼とお嬢様を必ず結婚させます。彼の『優しさ』がアナタの『悪』に染まらないことを祈ります」
危険度MAXの恋愛が、今始まるーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます