第20話 手紙

 屋敷に帰ってきた私は、自分の部屋のベッドに寝転び、マーティン様にサインをしてもらった本の表紙を撫でながる。



 今日起こった事の余韻に浸っていると、メイドがやって来る。



「シャーロット様。旦那様とクラーク様からお手紙が届いております」



 お父様にエドワードと婚約破棄する旨の手紙を書いたから、その返信かしら。


 手紙を受け取り、お父様からの手紙の封を開ける。


 お父様からの手紙の内容は、私の心配と、エドワードとの婚約破棄の後処理は任せるように、今後の事は気にせずに自由に生きなさいという内容だった。

  


 私の事を心配する内容と、お母様からの『今まで辛い思いをさせてごめんなさい』という言葉に私は胸を締め付けられる。



 今までは、エドワードの浮気から目を逸らして、婚約破棄を告げる勇気がなく、時間が経つにつれ感情が麻痺してしまっていた。



 今になってはラミア国に行った事は正解だったけど、家族には心配な思いをさせていたから、これからは心配させないようにしなければと思う。



 もう一つの手紙には、エドワードのお父様からの手紙とエドワードからの手紙が同封されていた。



 エドワードのお父様からの手紙には、謝罪と婚約破棄の書類はお父様に渡した事、エドワードの処遇について書かれていた。



 エドワードは今回の件の重大さを鑑みて、地方への異動と降格処分、自宅での謹慎処分に処されたと書かれている。

  


 次期長官と期待されているエドワードにとって、この処分は予想以上に大きく、経済省もこの件を重く見ているらしい。


 

 エドワードからの手紙には、今までの私達の思い出話と、今までの女性達はただの友達で、どんなに私の事を大切に思っているかが書かれていた。



 会って話しがしたいという手紙を見て、私はレターセットにペンを走らせる。



 メイドに「これを出しておいて」と渡すと、今日は下がるように伝える。


 

 メイドが部屋から出ていくのを確認して、力なくベッドに横たわる。



 エドワードは婚約破棄をしても私を傷付けたいらしい。


 謝罪もなく、言い訳だけの手紙に呆れてしまう。


 いつから私達の関係は拗れてしまったのか。


 エドワードをそうさせてしまったのは私の責任ではないか、と思い詰めていた時もあったけど、今では自分ではどうしようもない事があると理解している。



 それでも、くるものがあるわね……。



 しばらく考え込んでいると、副所長から貰った魔法の箱とお土産が目に入る。

 


 そうよ、今の私には必要としてくれる人がいる。


 過去の事ではなく、今の事を考えないと。



「明日は副所長をどこに連れて行こうかしら……」

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