全てを奪われたアリスは復讐を誓う〜絶望を乗り越え辿り着いた仇が許しを乞う?そんなの許せるわけがないわ。〜

Nekoyama

エピローグ_平穏な生活の終焉

第1話 _傲慢な悪役令嬢

「なんて汚いの!平民の街はドブみたいな匂いがするのね。こんなところに来ないといけないなんて!最悪だわ!」

そう吐き捨てたのは、この国の王太子の婚約者で伯爵令嬢のケイティー・カーターソン、未来の王妃になる女性だ。


彼女は王家の支持を集めるために平民と触れ合うようにとの陛下の命令により、3週間前から2日に1回、平民区域を訪れているのだが、いつもこの調子で怒鳴り散らして暴言を吐いている。


道ゆく人は、初めは滅多にお目にかかれないお貴族様の、さらにプリンセスの訪問を歓迎したが、ケイティーの暴言を目の当たりにした人々は、皆が逃げるように離れていった。


「暇だわ!今日は平民の食事を体験して差し上げましょう。この近くのお店に案内しなさい!」

ケイティーは護衛にそう伝えるものの、護衛も貴族なので良いお店なんて知らない。

護衛が少し離れた場所にいた住民に聞いてみると、近くに小料理屋があるそうだ。

それをケイティに伝えると、彼女はその店に案内するように命令した。


お店に着くと看板には『アリスの真心弁当』と書かれてあった。

「お弁当屋?私は小料理屋に来たのよ?中で給仕するように命令してきなさい!」


ケイティーの我が儘を無視すると自分の立場が危うい。護衛は店主に申し訳ないと思いながらも、中で料理を提供してもらえないかとお願いにいった。


「お客様、困ります。先日訪れたお客様が娘のアリスに痴漢しようとしたので、我々はお店をお持ち帰り専門店に変えたのです。娘に接客させなければと、今でも後悔します。」


「店主、実は貴族で伯爵令嬢のケイティー・カーターソン様がこのお店で食べたいとおっしゃっているのです。どうにかなりませんか?」


「我々の気持ちを汲んで下さるなら、どうか他のお店に変更いただけないでしょうか?お弁当を3つ献上しますから、どうかご容赦ください。」


護衛がお弁当をケイティーに届けて事情を説明すると、彼女は怒り狂い、護衛達の頭を踏んで叫びながらお弁当を床に投げつけた。

「私の言うことが聞けない平民は家畜以下よ。処分しなさい。」


地面には美味しそうな鶏の照り焼き弁当が無惨にも散乱していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る