第26話

初めてのお客さんは、20代くらいの女性の2人組だった。


喫茶店で手に入れたうさぎ型ポーションの瓶が気に入ったそうだ。2人とも家族へのお土産に買って帰りたいからと、それぞれ初級ポーションを5本ずつ購入してくれた。


1本800ゼニー(銅貨800枚)で販売しているので、8,000ゼニーの売り上げである。


「ありがとうございました!」


2人と1匹が笑顔でお客さんを見送ると、入れ替わりにハルトと側近の2人組がやってきた。


「皆、お疲れさま!

今日は開店記念品の提供をありがとう。

おかげで客足が伸びた!


ところであのポーションは本当に初級か?」


「うん、そうよ。作り方に秘密があって、他の店のものよりも効果が少し高いと思うわ。」


「少しどころではない!料理担当の従業員がナイフで指先を切ってしまって、もらったポーションを少し塗ったんだが、一瞬で傷が治ったんだ!


傷だけではなく、あかぎれもささくれも全て治って、まるで手が若返ったようだった。


普通は中級ポーションを使ってもこうは治らない。」


「高く評価してもらって嬉しいわ。気にいってくれたのなら、ぜひ買って行ってね。」


「あぁもちろん買う。正直に言うと買い占めたいくらいだ。

1本いくらなんだ?」


「初級が800ゼニー、中級が5,000ゼニー、上級が20,000ゼニー、特級は時価よ。


初級は軽い怪我や疲労の回復、中級は大きな傷・骨折や軽い病、上級は部位欠損や重い病の回復に使えるわ。

特級はお客様の依頼に応じて、個別に調合する予定なの。」


「な、それは安すぎるだろう。骨折や部位欠損まで治すようなポーションを、そんな安価に提供されては、多くの錬金術師や教会の治癒士が職を失ってしまう。」


「え、そうなの?それはマズイわね。どのぐらいの値段が適切なの?」


すると殿下の側近が口を開いた。

「普通のポーションの値段としては、初級5,000(銀貨5枚)、中級50,000(銀貨50枚)、上級3,000,000(金貨3枚)くらいでしょう。しかし独自の製法ゆえに効果が高いことを考慮すると、その5倍はとってもおかしくありません。」


「それではポーションを買える人がグッと減ってしてしまうわ。。。」


「マリーナ、ビジネスと慈善事業は分けて考えた方がよい。もし慈善事業もしたいのであれば、ルールを決めて、本当に困っている人を助けるのはどうだ?」


ハルトの言葉に、マリーナはハッとした。

確かに彼の言う通りである。マリーナはハルトに初めて尊敬の念を抱いた。


彼らのいうことは確かにそうだわ。もっと周りも見ないといけなかったのね。

マリーナらは、ハルトや側近の助言を受けるため、その日はそのまま営業を終了し、2人にお店のいろんな商品の値段を確認してもらうことにしたのだった。

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