第17話
ほどよく暖かい気候、擦れ合う草木の音、遠くで聞こえる鳥の声、まるでどこか遠くの山に来たような錯覚を覚える。
「クロウ、これはすごいわね。ダンジョンがこんな風になってるなんて知らなかったわ。」
「俺も驚いてるよ。
昔、孤児院に来ていた貴族は、ダンジョンが別の世界につながっているって言っていたけど、まさかこんな別世界みたいになってるなんて!
あの時は冗談かと思っていたけど、あながち嘘ではないのかもな。」
「別世界かぁ。確かにそう言われても、不思議ではないくらいの世界感があるわね!
地下1層は比較的穏やかな魔物が多くて、採取できる薬草も豊富だから初心者向けだって受付で言われていたし、ゆっくり過ごしましょうか。」
「そうだね。でも夕方までには戻らないと宿屋が閉まってしまうよ。」
「それは大丈夫。野宿できるようにいろいろ準備してきたわ。
昔住んでいた貴族の家は、あまり落ち着かなくてね。裏庭に野宿することもよくあったのよ。だから野宿は慣れっこだわ!」
「いろいろと複雑な家だったんだね。
俺もスラムにいたから野宿は得意だよ!」
「私たちのペースでゆっくり進んでいきましょう。」
“私たちのペース”、この言葉にクロウは舞い上がりとても喜んだが、後にマリーナのマイペースがとんでもないことを知る。
それはまだ先の話。
◆◆◆◆◆
その頃ダンジョンの入り口付近の階段では、マリーナに磔けにされた男たちが、ズルズルと落ちてきていた。
クロウにズボンのお尻の部分の布を燃やされ、マリーナに吹っ飛ばされた影響で服がボロボロになり、悲惨なほぼ変態と言える姿である。
現場を通り過ぎる冒険者たちは、ひそひそと声をひそめながら、なるべく彼らを見ないように横を通り過ぎていく。
「あいつら、新人いびりで有名なグループじゃねーか。いい気味だぜ!」
通り過ぎる者の中には、まだ意識を失っている彼らの顔に唾を吐きかけたり、装備を奪っていく輩もいたが、誰も彼らを助けたりしなかったのであった。
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