第595話 冗談かと言いたいが……

「…………」


 俺は、母親の言葉で当然固まる。

 俺は三國家の……子ども(実子)では無いからだ。


 けど、俺は一体誰の子どもなんだ……

 母親は俺が聞く前に、目を瞑った表情で勝手に語り始める。


「あなたは……私の妹の子なの」

幸恵さちえが、私の妹で有るのは以前話したでしょ?」


「…………」


(そうだっけ?)

(何か……今初めて聞いた気がするが??)


「幸恵は難産で有って……あなたを産むのを引き換えに命を落とした……」

「あなたの父親は天涯孤独の上。不慮の事故であなたを産む前に亡くなっている」


「私はあなたを……引き取り。武蔵と名付けた」

「武蔵のように育って欲しいと……」


「…………」


(それは……宮本武蔵の意味で言っているのか?)

(剣の達人でも有るが、芸術性も優れている)


(でも、俺はてんで駄目だな///)

(超弩級戦艦の『武蔵』で付けたなら……最後の運命は悲運過ぎるしな///)


「母さん……俺も、兄と虹心と比べて、何処か見劣りしているのは感じていた」

「でも、まさか……俺が母さんの子どもでは無かったとは……」


 俺は……何とも言えない表情と、悲観を含めた口調で(義理の)母親に話す。

 だけど今の今まで、この人は俺を実子のように扱ってきた。


 俺は落ち込んだ表情で、母親に話し始める。


「……虹心がから過剰に好いて来たし、妹のデッドラインを越えそうな日も多かった」

「虹心は、事情を知っているんだよね……母さん?」


「えぇ、知っているわ。武蔵」

「航平や虹心も知っている…。武蔵が私の子で無いことを……」


「今の今まで……知らなかったのは俺だけか…!」


 俺は吐き捨て居る口調で母親に言う。

 母親に八つ当たりをしても意味は無いが、この心のやり場を母親にぶつけるしか無かった。


 母親は困った表情で、俺に話し始める。


「この事は……武蔵が結婚するまで黙っておくつもりで有った」

「だけど、虹心が過剰にあなたを好いてしまい、更に津和野さんもあなたと再度関係を持ちたいと、虹心から聞いてしまった///」


「武蔵は勿論。私たちと養子縁組をしているけど、養子縁組を解消すれば、あなたは虹心と法律上結婚が出来るように成る」

「世間はその行為を奇抜な行為と見るだろうけど、あなたが本気で虹心を愛するならそれも可能だと……」


「…………」


 俺はに成るしか無かった。

 母親から行き成り、俺は他人の子と言われ、更にはまで実妹だと思っていた虹心と、結婚の話まで飛躍するからだ!///


(母さんは虹心と俺の関係を、間接的に応援していたのか……)

(だからこそ、俺と虹心の仲が過剰に良くても干渉をして来なかったのか……)


「……話しはそれだけ」

「私がこれを話したからと言って、今後も武蔵は実子で扱うし親の責任はキチンと果たす」


「けど、虹心の気持ちも汲んで上げてね///」


 母親は慈愛を含めた表情で俺に話すが、最後の文章は微笑みながら話す。

 俺は本当の母親の顔を見たこと無いし、父親も俺が産まれる前に死んでいたら見ようが無い。


(心の何処かで、俺か虹心のどちらかが義理の関係だとは思っていたが、まさかそれが本当だったとは…)

(ショックは大きいが、物心付いた時から俺は三國家に居るし、両親や兄弟を本物で見てきた)


(俺と兄に微妙な距離感が有ったのは、其処からなんだな……)

(虹心の場合は兄が大好きだったけど、現実味が有る俺に乗り換えたと!?)


「武蔵」

「誰だって、こんな話しを聞けばショックを受けるし、質問もしにくいと思う」


「幸恵に関することは聞かれれば、何でも答えるから安心してね」


 母親は微笑みながら俺に話す。

 俺がこれを聞いたからと言って、何かが変わる訳でも無い。


(あっ……養子縁組を解消すれば、虹心と結婚が出来るから変化は有る訳か!)


 俺はこれを良い機会と見るのか、不運な人生を背負っていたことに気付いたのか……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る