第432話 お家デートもおわり その3

 亜紀は和やかな表情で、俺に別れの挨拶を始める。


「今日は楽しかったよ。武蔵君!」

「ビデオゲームも、みんなですると楽しいね♪」

「虹心ちゃんにもよろしくねと、伝えおいてね!!」


「三國さん。桃香も楽しかったよ!」

「虹心ちゃんとも仲良く成れたし!!」

「また、みんなで遊ぼうね♪」


 亜紀の言葉の後。桃香ちゃんも笑顔で別れの挨拶を始めるが、次回の言葉も言う?

 当面の間。俺は亜紀と二人きりに成れる時間は来ないのか!?


「……///」


 桃香ちゃんの言葉で、亜紀は少々気まずい表情をしている。

 桃香ちゃんはまだ中等部だから、俺たちの関係を仲良く成った親友で見ていて、真の恋愛を知らないのだろうか?


「……じゃあ、武蔵君。今日はこれで…!」

「バイバイ…」


「三國さん~~!」

「バイバイ~~!!♪」


 亜紀は気取った表情で、俺に別れの挨拶を掛ける。

 桃香ちゃんは相変わらずと言っては駄目だが、笑顔で別れの挨拶をする。


「二人共、気を付けて帰ってね~~!」


 亜紀と桃香ちゃんに、俺は笑顔で別れの挨拶をする。


『ぺこり』


「~~~♪」


 亜紀は穏やかな表情で俺に軽く会釈をして、桃香ちゃんは笑顔で手を振りながら、駅建物の中に入って行く。

 お家デートで有るが、亜紀との初めてのデート(一応)は、これで終わりを迎えた。


「……」


(もし、今回のデートに点数を付けるなら……40点だな!)

(亜紀とは恋人らしいことは出来なかったし、普通に遊んだだけだからな)


 亜紀とはビデオゲームで楽しく遊べたが、今回はおまけ(虹心・桃香)が付いている。

 その所為で、亜紀との二人の時間は無く、最後に少し出来た良いムードも桃香ちゃんに妨害された!?///


(けど、来月は葉月祭が有る!)

(この葉月祭で、俺と亜紀の仲を深めれば良いか!!)


(虹心は演劇部だから、俺に付いて回ろうとは言って来られないし、桃香ちゃんも亜紀と一緒に見て回ることはしないだろう?)

(今日香ちゃんも……あの喫茶店以降。音沙汰無しだから、俺のことは完全に諦めただろうし…)


 来月の第一週末に、葉月学園の学園祭で有る、葉月祭が開催される。

 俺や亜紀は帰宅部のため、葉月祭をフルに見て回ることが出来る。


 今日香ちゃんに関しては、俺は亜紀を恋人にしてしまったし、今日香ちゃんも何も言って来ないから、俺を諦めて別の跡継ぎ候補を探しているのだろう?

 今更来られても、俺は今日香ちゃんの気持ちを断わるしか無いが…///


「さて。亜紀も見送ったし、家に帰るか!」


 亜紀たちの姿が見え無く成った駅の建物を見ながら、俺は穏やかな表情で呟く。

 俺は来月の葉月祭のことを思いながら、帰路へ就いた……


 ……


 俺が家に戻ると、兄はまだ帰って来ていなかったが、母親の靴は玄関に有った。

 亜紀たちの帰宅時間がもう少し遅ければ、亜紀たちは母親と鉢合わせしていたかも知れない?


 俺は何時も通りの帰宅挨拶をするため、二人がいる台所に顔を出すと、台所内では母親と虹心が晩ご飯を作っている。


「ただいま!」


 俺が母親と虹心に向けて帰宅挨拶をすると、虹心が反応を示して、俺に和やかな表情で話し始める。


「お帰り。兄ちゃん!」

「…無事に送り届けた?♪」


「……うん。無事に送り届けたよ」

「虹心!」


『トン、トン、―――♪』


「……」


 俺は虹心に穏やかな表情で言うが、母親は会話には参加せずに、包丁で野菜を切っている。


(どうせ虹心のことだから、今日の出来事は母さんの耳へ既に入っているだろうな!)

(そうでなければ、さっきのキーワードで聞いて来るに決まっている!!)


 母親に何か言われる前に俺は台所から出るが、その時見た虹心の表情は“にこにこ”笑顔で有った!

 言うまでも無く『お母さんに報告済み♪』の顔で有った!///


(…やっぱりな///)


 晩ご飯が出来るまでは、俺は自室に一旦戻る。


『パタン!』


「ふぅ……疲れた」

「けど、まぁ、亜紀と遊べて楽しかったな!」


 自室のドアを閉めて、俺は満足した表情で呟く。

 今回のお家デートはやや微妙で有ったが、亜紀や桃香ちゃんは楽しんでくれたし、虹心も満足そうで有った。


 けど、今度のお家デートは出来れば、俺と亜紀だけで過ごしたいなと感じた。

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