第59話 残務処理 その1

 翌日……


 今日は日曜日で有る。

 日曜日でも雀は元気良く鳴いていて、その日は雀の鳴き声で俺は目を覚ます。


 朝食を、小鞠ちゃんを含めた全員で食べた後。兄は彼女とデートのために出掛け、母親はベランダで洗濯物を干している。母親は昨日と今日は休暇のようだ。

 虹心と小鞠ちゃんは、昨夜のことは無かったかのように、普通に俺と話し、二人での時間を楽しんでいた。


 俺は虹心と小鞠ちゃんを警戒していたため、自室には戻らずリビングで休暇を過ごしている。

 今の二人は俺の中で、危険と感じたからだ!!


 それに俺も、二人のことをかなり意識するように成ってしまっている。

 男女世界は、先に既成事実を作ったもん勝ちだから、虹心や小鞠ちゃんに本気で襲われればそれまで有る!? 


 俺は態々わざわざ、自室から青年漫画の単行本持って来てリビングで読んでいる。

 けど……虹心と小鞠ちゃんは朝食後、俺へ特に声を掛けること無く、虹心の自室に戻っていった。


(どちらかが…、俺に声を掛けて来るかと思っていたが、何もないか…)

(嬉しいような寂しいような…。俺は身勝手だな…!)

(二村さんを求めているのに……)


「おや…?」

「武蔵が……リビングに居るなんて珍しいわね!」


 洗濯物を干し終えてリビングに戻って来た母親が、珍しそうな表情をしながら俺に話し掛けてくる。


「……たまには、リビングで休暇を過ごすのも悪くないかと!」


 俺が澄ました表情で言うと母親は何故か、俺が座っているソファーの真横に座った!!

 そして、俺を疑う眼差まなざしと口調で、俺に質問をしてきた!??


「ねぇ……武蔵?」

「昨夜……虹心の部屋から、武蔵の声が響いてきたけど、あんたは虹心の部屋で何をしていたのよ…?」

「まさかと思うけど……虹心や特に、津和野さんにやましい事はしてないよね!?」


(どうして母親が、俺が虹心の部屋に居たことを知っているのだ!?)


 一瞬、嘘をつこうかと考えたが、疚しいこと(!?)はしていないので、俺は驚きながら正直に母親へ言う。


「えっ!?///」

「どうして、知っているの!?」

「虹心の部屋に確かに居たけど、疚しい事はしてないよ///」


 俺は正直に話すが、母親は俺を疑う眼差しを解かない。

 母親は、疑う口調で言葉を続ける。


「……そう!」

「私も……知る気は無かったけどトイレに行った時に、階段から武蔵の声が聞こえてきてね!」

「階段から聞こえて来る部屋は虹心の部屋しか無いし、昨夜は津和野さんも一緒だし、それに武蔵が虹心の部屋に居る理由が、私には分からないのだけど!?」


 最後は少々、ヒステリック気味に言う母親!?


(母さん……俺の事を凄く疑っているな!)


 きっと母親の中では俺が虹心と小鞠ちゃんに、手を出したとでも思っているのだろう。


(事実を母さんの前で、話す訳には行かないからな!)

(少々、創作を入れるか……)


「……あれだよ、あれ、母さん!」

「昨日、虹心たちと買い物行っただろ!!」

「その時に、虹心の持ち合わせが少なくて、俺が貸したんだけど、返す時に成って虹心が急に『兄ちゃんのおごりじゃ無いの!?』と、言ったからそれで―――」


 俺はもっともの口調で母親に言う。

 上手に言葉を組み合わせて話し、母親からの疑念を晴らす!!


「……」


 疑う眼差しで、俺を見ている母親だが……


「あんたはオタク癖が有る割に、小遣いを貯めている感じだからね!」

「虹心も津和野さんと一緒だったから、羽目を外したのかな…?」


 母親は納得する口調で言うと、俺への疑いの眼差しは無く成ったが、少し嬉しそうな表情に変わって言葉を続けた!


「けど、武蔵!」

「同級生の子と、仲良く成れそうなんでしょ!!」


「虹心の親友と仲良くするのは良いけど、線引きだけはきちんとしなさいね!」

「津和野さん……。あんたに気が有るみたいだから…!」


 母親は、とんでないことを“さらり”と言った。

 どうして、知っているの!?

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