第12話 見捨てられた3人のメイド

 3人のメイド達は私を見ると青ざめた。


「あなた達!一体これはどういう事なのっ?!」


ヘルマはメイド達を叱責した。


「そ、そんな馬鹿な…」

「確かにあの倉庫に閉じ込めたはずなのに…」

「どうしてここにいるの…?」


「何だって…?」


3人のメイド達の言葉にジークハルトの眉が険しくなる。


「ヘルマお嬢様っ!信じて下さいっ!私たちはお嬢様の仰った通り、確かにあの女を北塔の倉庫に閉じ込めたんですっ!」


釣り目の気の強そうなメイドがヘルマに訴える。


「こ、この馬鹿っ!な、何て事を言うのよっ!」


メイドに自分が命じて私を閉じ込めさせたことがバレてヘルマは焦りの声を上げる。


「やはり、そなただったのかっ?!ヘルマ嬢っ!」


ジークハルトは怒りをたぎらせ、ヘルマを睨み付ける。


「ち、違いますっ!ジークハルト様っ!誤解です。わ、私は何も知りません!」


この期に及んでも、ヘルマは罪を認めようとはしない。


「ええ、そうですとも。ジークハルト様。仮にもフィーネは私の可愛い姪っ子であり、ヘルマの従姉なのです。そんな事我らがするはずないでしょう?」


叔父のしらじらしい言葉に嫌悪感を感じる。


「なら、何故可愛い姪っ子と言うのであれば、こんな酷い料理を出すのだ?いや…もはやこんなものは料理の内にも入らない…まるで残飯ではないかっ!」


叔父の言葉にジークハルトは冷たい言葉を投げかける。


「そ、それはこの屋敷の使用人たちが勝手にした事ですっ!な、何しろフィーネは離れに住んでおるのですから…わ、我らが知る筈も無いでしょう?」


「そうですか…。なら問います。何故フィーネだけを離れに住まわせる?!彼女はここの正当な血を引く女性なのにっ?!」


ジークハルトは私を掻き抱いた。その力強さが嬉しかった。


「そ、それは…フィーネが離れに住みたいと…」


叔父の言葉の後に、今度は叔母が口を挟んでくる。


「ええ!そ、そうよっ!私たちはフィーネの為に…両親を亡くして1人寂しい思いをして城に住んでいる彼女の為に、ここに来て上げたって言うのに、私達と同じ城で生活するのは嫌だからと言って、1人離れに住んでいるだけですっ!」


何て勝手な…いい加減な事ばかり言って来る人たちなのだろう。もう限界だった。


「嘘ですっ!私はそんな事一言も言ってません!こっちは頼んでもいないのに勝手にこの城へ上がり込み、私を離れに追いやったのはあなた達ではありませんかっ!」


ジークハルトの腕の中で私は叫んだ。


「その話…本当なのか?」


ジークハルト私に尋ねて来る。


「はい、そうです」


「フィーネッ!お前という娘は…っ!」


叔父が憎々し気に私を見る。


ジークハルトは次に震えているヘルマを見た。


「ヘルマ嬢…やはりそなたがフィーネを閉じ込めたのだな?」


「で、ですから違うと言ってるではありませんか!悪いのはそこにいるメイド達です!勝手にフィーネを閉じ込めたのですっ!」


「違いますっ!」

「ヘルマお嬢様っ!」

「私はお嬢様の命令に従っただけですっ!」


3人のメイドは涙ながらに訴える。


「う、うるさいっ!お前たちのように主を陥れるようなメイドは必要ない!さっさと荷物をまとめて今すぐこの屋敷を出ていけっ!殺されたくなければなっ!」


ついに叔父はとんでもない事を言い出した。


殺される。


その言葉を出されたメイド達は震えあがり…悲鳴を上げながらバタバタと走り去って行った―。




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