魂の侵略者 ~ハイスペックな宇宙人が来て平和な世界が実現しそうだけど人類は反抗期なのでした~

日出而作

第1話 やつらは突然やってくる

 二千百年の節目を迎え、大いに賑わった年越しも過ぎた春のこと。


 三原は、パソコンに向かって原稿を書いていた。

 何かネタはないものかと、チラチラとサイトを開いてみては、あれやこれやと寄り道をして、また原稿に少し書き足すということを繰り返していた。

 原稿を書いているとは言っても、プロの作家ではない。もっとも、プロやアマチュアといった線引きが曖昧な現代においては、要するに、誰も読まない物書きということになるのだが、毎日せこせこと小説を書くのが習慣だった。

 収入はほとんどなく、贅沢なんて望めない。しかし、基本的生活保障制度というものがあるので、仕事をしなくても週に二日のボランティアに参加すれば、慎ましく生きていくことが出来る。

 三原は、春の柔らかな陽射しを浴びながら、大きく背伸びし、生まれた時代に感謝した。


 気を取りなおして小説を書き始めるも、やはり筆が進まない。

 しばらく頭を悩ませていると、急に筆がのってきて、集中力が極限に達した。すらすらと話を書けている間は、なるべく勢いが途切れないように、他の刺激を全て遮断してしまう。

 そのせいで、決定的な瞬間を見逃してしまったことを、後ほどずっと後悔することになる。


 外から人々のざわついた声が聞こえていたことに気づいていたのだが、三原はあえて無視していた。

 筆の勢いが衰えたところで、SNSを開いた時には、すでにどこもかしこも大騒動になっていた。

 皆の書き込みを読むと、どうも、正体不明の宇宙船が地球の上空に来ているという話だ。


 そんなバカな話があるかとカーテンを開け、空を見上げて仰天した。


 何キロ先にあるのか分からないが、遠目に見ても分かるほどに途轍もなく巨大な宇宙船が空に鎮座していたのだ。

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