第23話 美味しいご飯
俺は鎧と剣を持って城へ向かった。
ジョイスとおじさんは仲良くベッドで眠っていた。
おじさんを起こそうとしたところに、ヘライオスがやって来た。
「グラルド様。そこの酔っぱらいはいったい誰なのですか?ジョイス殿が連れてきたのですが……」
「このおじさんと家を交換した。城に住まわせてやってくれ」
「犬猫じゃないんですから、素性の分からない酔っぱらいを拾って来ないでくださいよ」
「そう怒るな。このおじさんは酒さえ与えとけば手間はかからない」
「…………」
ヘライオスは呆れた様子でこちらを見た。
「俺は娼館の裏道にある赤い屋根の家に引っ越す。用があればそっちに来てくれ」
鎧と剣をベッドの脇に置いて城をあとにした。
門の近くの通りを歩いていると守衛に出くわした。
「おお、グラルド……様。お出かけですか?」
「グラルドでいい。気を使うな。家に帰るところだ」
「そ、そうか。そういえば俺、名乗ってなかったな。モン・バーンって言うんだよろしくな」
「……いい名だな。よろしく頼む」
「グラルドは城に住んでるんじゃないのか?王様になったんだろ」
「娼館の裏の生家に引っ越した。赤い屋根の小さなお家だ」
「家の近所じゃないか。飯はどうしてるんだ?誰か作ってくれる人がいるのか?」
「それはどうせ一人身なんだろという意味か?」
「いや、そういう意味では……。まあ、自分で作るタイプではないだろ。よかったら家の女房が作った飯持って行ってやるよ」
「自慢か?」
「ああ。こればっかりは自慢だ。家の女房の作る飯は世界一旨いんだ」
守衛は相変わらずいいやつだった。
嫁自慢は少々癪にさわるが、ここまで公然とのろけられては返す言葉もない。
「……そうか。それじゃあご馳走になろう」
「よしきた。後で持ってくよ。それじゃあな」
守衛と別れて家に帰った。
しばらくすると守衛がやってきた。
「よお、グラルド。うわっ、なんか酒臭いなこの家。王様なんだからもう少し良い家に住んだらどうだ……?」
「東京だったら一億円くらいする高級物件だ。問題ない」
「東京?なんだそれ」
「気にするな」
「よくわからないけど、まあいいや。これ女房の料理な。王様が食べるって言ったら冗談だと思って笑ってたよ」
「ありがとう。奥さんに礼を言っておいてくれ」
「おお。腹が減ったらいつでも言ってくれ。それじゃあな」
守衛の奥さんの飯は確かに旨かった。
旨いと言うか塩味のある料理を食べたのは十年ぶりだ。
小麦粉を牛乳でといて、多少の香辛料を加えたような料理。
要するにシチューのようなやつだった。マトモなユグル料理を食べるのは初めてだ。
パルマは豆ばかり食ってたし、俺は焼いた肉と茹でた肉くらいしか食わなかったからな。
素材の味を生かすってやつだ。
シチューを半分残して食事を終えた。
残りは明日の朝食べることにしよう。
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