年下のお義兄ちゃん
今日の午前の実践向き授業を終えて、午後からは皆は選択授業の時間。
この時間、私は空き時間になるので、今日はついに学園ダンスホールでダンスのレッスンを受けることになっている。
ダンス用のヒールを履いて、ホールの窓から外を眺めながらジゼル先生をまつ。
すっかり日差しも落ち着いてきたなぁ……。
なのに最近体が
先生に再会できた幸せで興奮が続いてるのかな。
とりあえず落ち着け、私。
カチャッ──。
静かなホール内に扉が開く音がして私が振り返ると、そこにはジゼル先生ではなく──。
「ジオルド君!?」
──我が自称義兄、ジオルド君が立っていた。
「な、なんでジオルド君が? ジゼル先生は?」
「ジゼル先生より僕の方がダンスは上手い」
いやそう言う問題じゃ……。
だってこれは私の事情を知る人が教えてくれる、王になるための特別な授業で──。
……まさか……。
「フォース学園長からの依頼だ。諸々の話は学園長に聞いた。お前の本当の年齢も、生まれも、何がどうなったのかも、そしてこれからどうなるかも」
「っ!!」
「…………なぜ、相談しなかった?」
睨むように私を見つめながらジリジリとこちらへ歩み寄るジオルド君に、私は思わず一歩後ずさる。
「それは……」
「僕が、お前よりも子どもだからか?」
「違っ!! ……迷惑を……かけたくなくて……。ジオルド君や皆との関係が変わってしまうのを先延ばしにしたくて……自分でも、どうしていいのかわからなくて」
まるで母親に叱られた子供のように俯き、言い訳を並べていく。
これじゃ、どっちが年上かわからない。
視線を伏せ、ジオルド君の次の言葉を待つ私の頭上に、ずんっと頭上に重みが重なった。
私の頭に降ってきたジオルド君の手は、動くことなくそのままの状態で居座る。
「じ、ジオルド君?」
「ごめん。気づいてやれなくて。僕はお前の義兄なのに」
掠れた声が私のすぐそばから放たれる。
見上げれば眉を顰め苦しそうな表情を浮かべたジオルド君の美しいお顔。
「ジオルド君のせいじゃ──」
「いや、義兄として、もっとお前を気遣うべきだった。忙しさにかまけて、お前の変化を見落とした」
真面目!!
本当に、そういう生真面目なところ、先生とそっくりなんだから。
「……私、20歳なんですよ? 実際生きてきた年数全部合わせたらもっと長く生きちゃってるんですよ? 年下に気遣われるなんて」
「それでも、お前は僕の義妹だ。前に言ったはずだぞ。お前は【たった一人の僕の大切な妹】なんだって。僕は一度言ったことは簡単には覆さない」
「!!」
「だから、なんでも言え。辛くなる前に」
動くことのなかったずっしりとした重みが、ゆっくりと左右に動く。
丁寧に撫でてくれるジオルド君の手に思わず目を細め、私は目の前の優しい義兄にふにゃりと笑った。
「ジオルド君、ありがとうございます。大好きです──お義兄ちゃん」
「……あぁ」
頭がゆらゆらするのは撫でられているから?
ふとそんなふうに感じた瞬間、私の身体はふらりと傾き限界を超えた。
床が近づいた同時に衝撃が体を襲う。
「はぁっ──はぁっ──……!!」
身体が、熱い。
意識が──遠のく……。
あ……だめだ……。
「ヒメ!? おいヒメ!! ヒメ!!!!」
ジオルド君の私の名を叫ぶ声が遠くなって、私の意識は暗い海の底へと沈んだ。
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