第15話<もともと良い心>

「みなさんに質問があるんですが・・・

人の心が良くならなければお金のない社会は難しいと

周りの人たちから言われているんですが

人の心は生まれたときから悪いんでしょうか?」


「性善説と性悪説のことはご存知ですか?」


「聞いたことはあるけど詳しくは知りません」


「インターネットで検索してみました」





>性善説(デジタル大辞泉)

人間にはもともと善の端緒がそなわっており、

それを発展させれば徳性にまで達することができるとする説。

孟子が唱えた。⇔性悪説。





「もともと善だとするといつから善が薄れるんだろう?」


「それは社会のシステムを子供に教えるからじゃないの?」


「お金がないと何も手に入れることが出来ないってことね」


「手に入れたものは出来るだけ自分の物にしておきたいという

所有の欲望も身について来るんだと思うよ」


「我欲が働き始めるってこと?」





>我欲(デジタル大辞泉)

自分一人の利益・満足だけを求める気持ち。





「社会システムを教える前の幼児期での我欲はどうなんだろう?」


「手に持ってるおやつでも『ちょうだい』と言うとくれるよ(笑)」


「あれを見ると性善説が正しいような気がするよ(笑)」


「『三つ子の魂百まで』って聞いたことがありますよ」





>三つ子の魂百まで(デジタル大辞泉)

幼いころの性格は、年をとっても変わらないということ。





「この言葉通りに育てることは出来ますか?」


「それはお金のない社会にすることじゃないですか?」


「人の心は社会環境によっても変わりますからね」


「あと、気になることがあるんですよ」


「何でしょう?」





「『人様に迷惑をかけてはいけません』って育てますよね」


「それは当然のことでしょう」


「それが悪いわけじゃないんですけどね、それだけじゃダメだと思う」


「ほかに何が必要なの?」


「『人が喜ぶことをしよう』を先に言ったほうが良いと思うんです」





「なぜ?」


「人に迷惑をかけないようにするには人と関わりを持ちたくないと

思うようになって社交性に消極的になると思うんです。

『人が喜ぶことをしよう』と育てると積極的に人と関わりを持って

社会がより良くなるような気がするんです」


「いまのお金の要る社会でも活用できるだろうけど

お金のない社会ならもっと簡単に実行出来るかもしれませんね」


「『人が喜ぶことをしよう』は教育のテーマにして欲しいですね」


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