第20話 リン参戦!モンキーバースト!!
「さあ、美鈴ちゃん。リンの番だよ」一回戦の中盤、リンの試合が近づいてきた。俺はサポーターとして、一緒に会場に連れ添う。
試合に参加しているオルナスだが、半数はオーナーがチューニングして特殊なスタイルや、武器を持った物。あとの半数は、販売されているオルナスをそのまま参加させている感じであった。やはり、オリジナルのオルナスの性能はノーマルを圧倒していて、全く歯が立たないというのが俺の印象であった。
ただ、美鈴のリンを除いての話である。
リンを肩に乗せた美鈴が会場に現れると響めきが聞こえる。彼女の奇抜なファッションのせいもあるが、それはリンに注がれた物でもあった。
「おい!あれ2001のプレミアじゃないのか!?」オルナスオタクの男子が立ち上がった。
「本当だ!こんな大会にプレミアを出すなんて頭、可笑しいんじゃないのか!」会場の一部がざわめいている。
このバトルカーニバルは、文字通り殴り合いの戦いが繰り広げられる大会である。そんな大会にオルナスの高級機を投入するなんて酔狂に思えるのであろう。
「さあ、第9試合です!白 パンモンキー!マスターは、猿田彦摩呂!!」スタジアムの向こう側に、さきほど猿が目に入る。彼の肩からパンモンキーがジャンプして、舞台に飛び移った。それはまるで本当の猿のように身軽なものであった。
「続きまして、赤 ビューティー・リン!マスター ビューティー・ハート!!」何、そのリングネーム……、俺は頭を抱える。
「リン!行くわよ!!」美鈴が合図するとリンは美しい孤を描いて宙を舞った。その瞬間、再び響めきが起こった。
「奇麗!」「格好いい!!」「可愛い!!!」それはリンの姿を賛美するものであった。この一瞬で美鈴とリンは会場の観客を味方にしのだった。
「さあ、両雄が舞台に降り立ちました!この6分間、我々に何を見せてくれるのでしょう!!」
カウントダウンが始まる。
3・2・1!
リンは再び舞い上がると、パンモンキーめがけ強烈な飛びけりを喰らわそうとする。しかしパンモンキーは、更にリンの上空にジャンプ、それはオルナスの飛び上がれる高さではなかった。
「アイツ、口だけじゃないぞ!」俺は思わず口にしてしまう。
「解ってるわ、そうじゃなきゃ燃えないわ!」リンは蹴り足で着地するとそのまま身を翻して、場所を移動した。
パンモンキーは、独特のフットワークで距離を縮めてくる。リンが逃げようとすると、パンモンキーの右手が飛び出して彼女の首元を掴んだ。
「しまった!!」美鈴は拳を握りしめる。
飛び出したパンモンキーの腕はワイヤーで繋がっており、それを回収するかのように胴体が強烈な勢いでリンの体に体当たりする。
「どや!これがワシらの必殺技モンキーバーストや!!」猿田がほくそ笑む。
「リン!」リンの体が舞台間際まで飛ばされる。下に落ちると失格である。彼女はかろうじて踏み止まると、体制を整える。
「あーあ、やっぱり見かけ倒しかよ」観客の声が聞こえる。その観客を俺は睨み付ける。その視線に気がついたのか、声の主は目をそらした。
「さあ、ビューティー・リン!ピンチです!切り抜けられるか!!」
「もういっちょ行くで!」猿田の声。パンモンキーが再び、パンチを繰り出す。
「同じ手には引っ掛からないわよ!」リンは、飛んできた腕を右手で払うとパンモンキーと距離を詰める。
「おっ、やるやんか!」猿田は感心したような声を上げた。パンモンキーは、腕を回収すると大きくジャンプして、距離を開ける。
「卑怯者!なんで逃げるのよ!!」美鈴が地団駄を踏む。
「なに言うとんねん!戦術や阿呆!」
「阿呆!、阿呆ですって!?……阿呆!言う人が阿呆よ!」だんだん本性が出てくる。
「ほれ!もういっちょ行くで!」また同じ攻撃。
「だから、通じないって!」また、上手くかわしたが、今度は反対腕が来た。もう一度かわそうとするが、次は指先が四散してリンの体に纏わりついて身動きが取れなくなった。
「あんなの有り!?」美鈴は俺の腕を強くにぎった。
「これでジ・エンドや!モンキーバースト!!」パンモンキーが再び凄い勢いでリンに襲いかかる。その瞬間、リンの負けが確定したと誰もが思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます