第18話 ワインと北島博士

「北島博士、一緒にバトルカーニバルを見ませんか?」男が北島博士の研究室のドアを開けた。


「なんだね、バトルカーニバル?そんな暇など私にはない。他所でやってくれ!」相変わらず、モニターに顔が引っ付く位近づけてキーボードを叩き続けている。


「今後のオルナスの研究にも役に立つかもしれませんよ。それに私の子も出場しているのですよ。他の場所では落ち着いて見れないのでお願いしますよ!」その手にはワインとグラスを持っていた。


「昼間から酒か。ええ身分じゃな」言いながらグラスを渡すように催促している。


「適度にね」微笑むと男は、北島にグラスを渡してワインを注いだ。


「あんたの子供のオルナスは、原君のチームが作ったものだろう。どうせなら、彼らと観戦すればいいじろうに」乾杯もせずに注がれたワインを一気飲みする。そうとう酒は強いようである。


「たしかに、彼らのチームの実力は認めてはいるのですが、どうも彼らにはユーモアという物がない。話が面白くないのですよ」男は自分のグラスに自らワインを注ぎ、軽く舐めるように一口含んだ。


「ふん、普通の研究者はたいてい、そんなもんよ」グラスを差し出して、ワインを満たすように催促する。


「そうですね。博士は普通ではないですからね」要求に応えて、ワインを補充する。


「ほっておいてくれ」また、一気飲みした。


「今回から、当社がスポンサーになって出資も結構頑張りましたから、面白い大会になると思いますよ」男はパソコンの画面を大きなモニターに接続すると、ネットを検索してライブ中継につないだ。


「なに、所詮は子供のお遊びよ」顔が少し赤くなっている。


「解りませんよ」椅子をモニターの前に移動させると、腰を下ろした。


「ふん!」北島は、大きな鼻息を吐くと、またワインを催促した。

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