第15話マジで戦う

新キャラ出てこい!と願ったが、そんな魔法は無いらしく目の前の侍は首を傾げる。運よく助けてくれる救世主は出てきませんね。


『1つの質問があります!せめて聞いてください。』

『むむ?あまり時間が無いのだが、良し言うがいいぞ!』


『あなたは、地球と言う世界の、日本という国の方ですか?日の本とかヤマトとか倭とか知ってますか?あ、天照大御神とか知ってますか?』

『おお!知ってるぞ!私は日の本の侍。美濃の出だ。お前もそうなのか?』


『俺はもっと後に生まれました。織田とか豊臣とか徳川とかよりももっと後。元号は平成です。』

『ふむ、織田か尾張の方にそんなのがいたらしいな。何で尾張の侍の話が出るのだ?まあ、いい。それよりも後、平成か。ほう。良いことを聞いた!やはりお前は惜しいな。』


『では、話は以上です。どうぞ!』

『ハハハ、見事だ!恐れを見せぬその胆力、天晴!流石は日の本の男子おのこよ!』


俺は死ぬ事にした。ああ、最後の最後に見捨てられたのは構わない。仲間でもないしむしろ敵だしね。アリアさん達よりもこっちの方が強そうだという事は分かる。てことは、マジで殺してくれそうじゃん。それに賭ける。というか、逃げるの無理でしょうし、逃げてどうします?


最期に褒められるのってこんなにうれしいのか。いやー、人生で初めて褒めて貰ったな。そういえば、父さんは褒めてくれなかったな。厳しい人だったけど、嫌いではなかった。けど、褒めてくれても良かったじゃん。とちょっと思う子供ゴコロです。こんなに清々しい気持ちで死ねるのか。殺してくれるのがあなたで良かった。しかも日本人とは、運命だな。


では、運命よ、この世界よ、父よ、さらばだ。母さんとは会えれば嬉しい。でも、無理かな。異世界に来てるしまあ、贅沢は言わないよ。


俺は侍の顔を見たまま棒立ち。斬るには簡単すぎる相手だろう。だが、何故か斬りかかってこない。

『んんん?おい!何かしているのか?』

『はい?』


何言ってんのか。無抵抗だよ。

『何を狙っている?チィッ、流石に簡単には斬らせてくれぬか。良いぞ!果たし合いにて逝きたいか!流石よ、さすが!』


どこの誰のことを言ってる。俺の事なら何もしてないけど?さっさと斬れよバカ。

『な、バカとは。ほほう。煽る気だな、相わかった。参る!』


侍は間合いを一気に詰める。アニメで見たそれそのまま。目の前にスンッと現れ刀を居合にて一閃。俺は気を付けの姿勢のまま。これなら、俺の右腕から胴体までスパッといきそうだけど、傷一つない。おかしい。俺は本当に何もしていない。


『お主!名は何という?某、信兵衛と申す!』

『え、えーとコータ!コータと申す。』

『コータか。動かずとも勝てる、か。侮ったわ。全力で参る!』


いや、勝てないよ。何がどうなってる?

『"奉公人アリージェンス信兵衛しんべヱが執行する"』

某アニメの様な気とか魔力の爆発とか明らかな異常は分からない。"ガワ"があったら見えるのかもしれないけど。ただ、強くなったのは分かる。

ユラリと前傾になり相変わらず正面からの居合。右腕が切断された。それが分かったのは侍がバックステップから再び間合いを詰め上段から脳天を叩き斬ろうと構えた時だった。それ程早く、強い。ちなみに、痛みはなかった。これならここが死地だなと、相変わらず直立を保っている。侍、信兵衛は距離を詰め脳天に刀を振り下ろす。

ガィーーーン。地面に足首までめり込んだ。右腕は光の粒が修復し始めているが、信兵衛の動きが早すぎる。

俺の目の前で半身になり両手で握った刀が喉元へ。

ガィーーーン。バランスが取れず仰向けに転倒。だが、砕けない。右腕は治っていた。


おかしい。ご都合主義にもほどかある。敵が何かした訳ではない。誰だ?


あ、キューピッド!アイツ最後っ屁で呪文唱えてた。あれか、あれだな。でも何で?メリットが無い、・・・事も無いか。

俺で時間を稼いで逃走する算段か。

でも、大丈夫なのか?権能が必殺技なのは分かるけど、大体そういうのって代償が伴うってのがセオリーなはず。まあ、大丈夫だから使ったんでしょうな。



一方その頃、アリア御一行。

『マリストル大丈夫か?』

『い、、痛い。ヤバイよー。アイツ権能ぐらいは使えると思ったんだけど、バラモントは使い方教えてないの?』

『コータは使っているところを見ただけだ。何も教わってない。権能についても教わってない。能力の一端を見ただけだ。』

『はぁぁぁぁー?ふざけんな!アンタ説明が半端すぎるのよ。今すぐ戻らないと、絶対あいつ負ける。ギャッッッッッ』

『・・・・。これはマズイ。戻るなら今ですよ。これ以上進めば、コータさんの元に着く前に決着が付きます。どうします?』

『逃げるぞ。』

『アバンダル!このままではマリストルが死んでしまう。』

『致し方ない。それを承知で権能をつけたのだろう?まさか小僧が勝てると思ったのか?』

『こんなに弱いと思わなかったもん。今すぐ回収する。』

『"介添人グルームスマンマリストル、ゴブっっっっっ"』

『マリストル!戻ろう。戻るべきだ。私達の時間稼ぎの為に、権能を貸したんだ。戻って少し助力をしてから避難すればいい。』

『なら貴様が行け。ワシは逃げるぞ。』

『・・・。多数決に従いますよ。』

『ばや"ぐじだい"どゲブっっっっ!』

『マリストル!ま、マズイ喉が潰れてる。』

『回復せんのか?』

『権能を戻さないとダメだ。全て貸し出している。魔力も記憶の上澄みも、源泉の囲いも全てだ。』

『はやぐ、ばやぐじないと、じんじゃうよ。しに"たぐない。』

『好きにすればいい…ワシは逃げるぞ。ではな。』




信兵衛VSコータ

『お主強いな。やりよる。まだ手も下さんか。ほうほう。面白いことよ、っっっ!』


信兵衛は仰向けの俺にガンガン刀を振り下ろす。頭やら胸やら肉体なら急所であろうところを滅多刺し。何回も何回も。でも、刺さっていない。ガィーーーンガィーーーンと弾ける音。ふーん、これ俺が死ぬまで続くなら厄介だ。信兵衛の増援が来ても厄介だ。どんな組織かわからない。実験体にされることすらあり得る。信兵衛は強いということは分かった。アリア達の慌てようや、実際戦って分かる、強い。


なのに、俺は無傷。もし、敵の増援が来て捕縛されたら?サンドバッグとして使われるか、実験されるね。アリアさんに聞いた通り、俺は珍しい。五感が無い。それにキューピッドが言っていた、この穢れ方の異常性。マッドサイエンティストにはウハウハものだろう。

だから、逃げないとヤバイかもしれない。新兵衛は殺す事にこだわってるからいいけど、増援が頭のおかしいやつなら、やっぱり時間をかけるのはヤバイ。


どうする?胎安宮か?追いかけられそうだ。ああ、アリアさんに胎安宮の事聞けばよかった。忘れてたーーーーー。魔法使ってみるか。ん〜そうだな原爆が最強って思ってるけど、流石にね。日本人として安易に使う気はない。この世界でもそれは変わらない。あれはダメだ。


よって、拳銃召喚!来い!拳銃!ピストル!


出てこない。イメージって言ってたじゃん。どうしたもんか。


だとすると、自然が最強だな。某マンガでもそうだったからな。人造の物なんてたかが知れてる。雷に落ちてもらうか。イメージだ、ピカッ、どぅぅぅぅんっっっ。バリバリバリバリどうぅぅぅぅん。これだな。


『はぁー、何故だ、お主固すぎる。いや、おかしい。魂一人ぐらい5分もあれば片付くはずだ。お主何かしたのだろう?教えてはくれんか?』

ピカッ、どうぅぅぅぅん!一撃目。ゴロゴロバリバリバリバリどうぅぅぅぅん!二撃目。

おお!出た!出たぞおおお!信兵衛が砕けた!けど復活してるな。というか寝たらダメだったかな?確か、雷からの避難姿勢はしゃがむだったはず。なんで寝たらだめだったか、はて?まあいい。俺には影響無いみたいだ。


魔法は使えた。足留めやら攻撃を止める手段にはなるけど、問題は殺せない事だ。現に復活してる。俺の持ってる必殺技、案内者コンシェルジュだが、呪文を聞いただけで完璧には覚えてない。というか、ところどころ抜けてる。使えるかどうか不明だが、やってみますか。

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