4.18.魔力石回収
魔力……かぁ……。
やっぱり技能を使うのにも魔力って必要なんだね。
あ、そういえば……。
アブスさんと戦って、僕が『決壊』を使った時……。
体から何か抜けるような感じがあった。
そうか、あれが魔力なのか……。
いやちょっとまって?
アブスさんの拘束を解くだけで自分でも分かるくらい魔力が失われてたってことだよね?
応錬って人の封印……『封殺魔法』って結構すごい魔法使いが張った結界だろうし、それを解こうと思ったら相当な魔力が必要になるんじゃ……?
そうだとしたら……僕が持っている魔力だけだと絶対に封印は解けないことになるのか。
「ってことで……あってますか?」
「正解だ。だから魔力石を探しに向かおう」
「魔力石?」
字面からどういう物かはなんとなく分かったが、とりあえずダチアの説明を聞いておく。
「魔力石とはその名の通り、魔力が込められた石だ。結晶でもある。それを手に握った状態で技能を使えば、まずはその魔力石に入っている魔力が消費される」
「それを使えば、封印を解くことができるってことですね」
「そうだ。だが魔力石が手に入る時期は限られていてな……」
そういいながら、外を見る。
まだ青々として空に雲が幾つか流れているだけではあるが、そこにうっすらと見える月を発見した。
半月の形になっているところを見て、眉を顰める。
「……あと五日後くらいだろうか」
「と、いいますと……?」
「魔力石は新月の時でなければ回収できないんだ。それに加え、魔力石を体内で作り出している魔物も希少だときた。一夜の間にその魔物を探して倒さなければならいのだよ」
魔力石は基本、魔物の体内で生成される。
魔石とは違い、中に入っている魔力を使うことができるというのが特徴だ。
魔族領にはそうした魔物が四種類いるのだが、どれも珍しく強力な存在なので見つけることも難しいし倒すことも難しい。
新月ではない時に魔力石が体内から取り出されると、中にある魔力がすぐに霧散してしまうのだとか。
めっちゃ難易度高くない?
一夜で見つけなきゃいけないって……。
事前調査とかで予め確保しておいたりするのも駄目なのかな。
そう思って聞いてみたのだが、そもそも魔力石を作り出す四種類の魔物は新月の時にしか姿を現さないのだという。
魔力石は貴重なので新月の時には悪魔総出で魔力石回収に勤しんでいるのではあるが、それでも見つからないことは多い。
というより、見つけられない事の方が多い。
その話を聞いて、アマリアズが首を傾げた。
「ん? どういうこと?」
「魔力石を作る魔物は、個体数は多い方なのだ。しかし純粋に見つけられなくてな。隠れることに特化した魔法を持っているのだろう」
「「……それなら……なんとかなる?」」
僕とアマリアズは顔を見合わせた。
見つけられないということは、気配を隠しているか、姿を消しているかのどちらかだ。
それであれば、どちらかが見つけられる。
僕は『大地の加護』という特殊技能を持っていて、姿を消している相手であれば見つけることができる。
気配を強く感じ取ることができるのでできる芸当だ。
一方アマリアズは『空間把握』という技能を持っており、気配を隠している相手を見つけることが得意だ。
これは索敵技能の一つであり、彼が一番よく使う技能なので精度は高い。
姿を消す、気配を隠す、という技能二つを持っていることはまずないと思うので、どちらかがその魔物に気付くことができるはずだ。
前鬼の里から森に移動していた時も、これを駆使して索敵していた。
僕とアマリアズがいるのであれば、見つけにくいという魔物を探し当てるのはそう難しくないだろう。
詳細を説明すると、感心したようにダチアが顎に手をやった。
僕の後ろにずっと控えているアトラックは頭を撫でてくる。
「それであれば難しい事はなさそうだ。悪魔はそういった技能をあまり持っていなくてな」
「へぇー! 二人とも凄い! 次の魔力石回収だけで四人分の封印を解く魔力石を回収できるといいねぇ!」
「ああ、それもそうだな。期待しているぞ二人とも」
ああ、そうか。
四体いるって話だったもんね。
応錬って人の封印だけを解くのはちょっと不公平だし……。
なんにせよ、五日間は待たないとな。
新月の日まではここでゆっくりさせてもらうことになった。
天使への警戒は悪魔が担ってくれるということだったので、お言葉に甘えて今日は休むことにした。
前鬼の里であんなことがあり、ずっと歩きっぱなしだったということもあって布団に倒れると同時に眠ってしまう。
最後に、今前鬼の里はどうしているだろうか、と思いながら意識を手放したのだった。
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