第39話 ピアノを閉じて(おやすみなさい)



ピアノを弾いてみよう


誰にも聞かせたくない

下手くそな音を導く鍵盤は


悲しいのは

鍵盤を叩く指ではなく


曲を暗記できていない神経でもなく


美しい調べを自分自身に聞かせることのできない力


なのに

ファンキーでトンクな

曲にならない音が


何故だろう

私を慰める


まるでプロのジャズ・ピアニストのように

ピアノの上に置いたシングルモルトを拾い上げ


最高だろう?

この曲は

と自分に問いかける


全くだな

最低だよと答える


まるで意味も分からない私は

夢遊病者のようにベッドに潜り込むと

いつも以上に心地よい眠りにつく


おやすみなさい

さよなら


また会いましょうと


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