第29話 晩酌



愛するワンちゃんが傍にいる。


これがまた

ややこしいんだわ。


こうしろああしろと

鳴いたり擦り寄ってきたり。


それでも

家飲みが好きなのであります。


ゆっくりと角氷の入ったグラスを唇に傾け

大好きな本を読む。


書斎で

好きな物を煮たり焼いたり。


流石に油物はいたしません

本の痛みが早いんだわ。


と言いながらも

書斎にある本は古本屋に売りたくない古い本

だからページも剥がれかかっています。


私を育ててくださっている

全ての命に感謝をしながら

大好きな食べ物を

大好きな本に囲まれて大好きな飲み物でいただく至福の時。


本を読みながらウィズ・ロックで飲むシングルモルトは最高です。


しかしながらも想像以上

意表を突かれたように感動的な場面に出会った時

私は本を閉じるのです。


酒に酔って読みたくはないのです。


素面しらふの自分に戻ってから

読み直したいのです。


ベッドに潜り込んで

両手を後頭部に当てて腕を組む眠れない夜

そんな眠り方をしたくないのです。


両手は布団の中の

お臍のあたりに当てて

明日はこの本が読める

そう思いながら

明日が良い日であることを想像しながら


一日のページを閉じる

今夜はそんな夜なのです。

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