第51話
──半年後。
雨がしとしとと降り続く中──
「まだまだ力が足りぬ──」
大きな岩の上に座り、血で出来た大鎌を担ぎながら我は呟く──
目の前には厄災クラスと言われる魔物の死体が死屍累々としておる。
「いやはや……まさかアーク様一人で討伐なされるとは……」
ジョイは頬を引き攣らせながら我にそう声をかける。
「ジョイも似たような事が出来るであろう? この程度に時間がかかり過ぎてしもうたわ」
ジョイ以外は基礎が疎かなのでたまに我が鍛えておるがな。
我は道化と戦った時よりも、訓練量を増やし、更に強くはなった。だが、まだ足りぬ。
母さんを復活するのもまだ無理だ。
最低でも成長が終わる前に道化と戦った時ぐらいの強さにならねばならぬ。
やはり、しらみ潰しにダンジョンにでも潜って訓練するか──
そんな事を考えていると──
「「「こちらも終わりましたッ!」」」
他の
我と父上は現在、兵士を引き連れて領土の森から溢れ出る魔物の討伐をしておる。
我は敵が弱すぎるので、更に奥に行って元凶を討伐しておった。ジョイはお目付役みたいなものだな。
本来、物語のアークはこの件で兵士と共に戦いながら血を慣らし、領民の信頼を得たと推測している。
我は既に兵士や使用人からの信頼は得ておるので、雑魚は父上と兵士、お守りで他の
実はここで魔物の殲滅が完璧に出来ておらぬせいで、本編でアークは再び領土の危機に駆けつけたという記述があった。
既に根こそぎ殲滅したので、我が戻る心配もあるまい。父上もおるしな。
この半年で魔力だけは飛び抜けて向上しておる……。
理由はソアラ達の料理が原因だ。いや、ノーラも大概だが、ソアラの方がヤバいのである。
ソアラ達が屋敷に来る度に料理を食しておる。
魔力を封じられ腹痛に悩まされてはシロ丸に回復してもらうという繰り返しではあるが──
ある日、無理矢理に魔力を込めようと限界を超えると魔力の絶対量が増えた……。
我は思ったのだ。この苦行を繰り返し行えば、母さんが早く復活出来ると。
なので甘んじて料理を食しておる……。
ちなみに何度かソアラとノーラの2人と一緒に料理を教える為に立ち会ったのだが──
もはや、我の踏み込める領域ではなかった……。
まず、材料は──まぁ普通であった……だが、問題は調味料であった。
どこで手に入れたかわからぬ、マンドレイクを始め──高価な毒物や魔法薬も使われておった……。
これらを使った鍋は何かを召喚出来るのでは? と思うぐらい禍々しいオーラを発しておったな……。
そして──最後に何やら呟いておった。
何を言っておるのか気になったので聞き耳を立てると──
『愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています、愛しています────』
──と2人で連呼しておった……。
愛情が篭っておるのが凄くわかった瞬間だったな……。
しかも、トドメがソアラの『呪魔法』とか笑えぬ……。
とりあえず、相乗効果でヤバい料理が出来てしまう。
我ではお手上げだと判断したので、諦めた……一応、味見をしないか聞いたが、当然ながら味見はせぬらしい。
我の魔力が高水準となったら、いつかしてほしいものである……。
訓練だと思って我はこれからも定期的に食すだろう……ソアラ達も喜ぶからな……。
そして、ノーラは既に我の婚約者になってしもうたな……父上から他家には男としての認識が強くて貰い手がないと言っておった……。
そういえば──
今では、屋敷の者達や兵士達も何故か好意的だ。
フィーリアに聞いたところ。
『アーク様が本当に屋敷の人達の事を想っているのが伝わったんです。使用人の為に普通は涙なんか見せないらしいですよ?』
と言われた。
つまり、母さんが死んだ時に悲しんだ事が1番の要因らしい。
フィーリアからは使用人達の事を時々教えてくれるのでありがたい。
しかし、夜這いだけは勘弁願いたい……最近では我が結界を張っておっても『影魔法』で普通に入り込んで来よる……。
ミラもたまに来る……こっちは正面突破で結界を斬り裂いて来よる……。ミラはいつの間にか『闘気』と呼ばれるスキルを習得し、簡易的な結界では既に防ぎきれぬようになっている。
さて、もうすぐ学園が始まる。
学園は高等学院と呼ばれており、裕福な家庭の者、才能がある者、貴族の大半が通い、2年間切磋琢磨する。
既に本編と流れは変わっておる。
我だけが強くなるだけではなく──
四天王とも作戦を練ったし、領土を守る為に武器も作った。
それにミラやソアラ、ノーラ、ウェル、セレナにも自衛出来るように稽古もつけた。
やれる事はやった。
後はフラグを叩き折るのみだ。
四天王と言えば──
我はあやつらの頼みでネット小説を投稿した。
内容は──
『勇者に憧れた結果』
──の物語が始まる前の話だ。
我の体験談を物語にしただけだがな。
題名は──
『元魔王はフラグをへし折る』
──にしたのだが、四天王達がどうせならランキングを制覇する為に今風の題名にしようという事になり──
『転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だったので、へし折ったらデレたキャラ達に好かれた件について』
──になった。
二次創作のような気もするが、登場人物の名前も変えておるし、ストーリーも違うから大丈夫だと言われた。
そして、我の作品はネットで高評価を貰う。
それと同時に『勇者に憧れた結果』の関連性も話題となった。
その結果、ランキングでは──
1位:『転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だったので、へし折ったらデレたキャラ達に好かれた件について』
2位:『勇者に憧れた結果』
我は見事、1位を獲得する。
ネット小説を好んで読む者達もバッドエンドより、ハッピーエンドの方が好きなのかもしれぬな。
まぁ、我の物語がハッピーエンドなのかどうかはわからぬが……。
少なくとも──
『転生したら破滅フラグしかない悪役貴族だったので、へし折ったらデレたキャラ達に好かれた件について』
──を最後まで読んでくれた者達はその傾向が強い気がする。
たくさんの者に読まれるのは、少し恥ずかしいが作品を支持されたみたいで嬉しいものだ。
そんな事を思いながら、我は皆のいる場所まで戻る──
「「「アーク様ッ!」」」
すると、笑顔で出迎えてくれる。
我の求めていたものがここにある──
ついついニヤけてしまう。
「──!? アーク様ッ! 後ろッ! ドラゴンですッ!」
1人の兵士が我にそう叫ぶ。
振り向くと属性竜がいた。おそらくこやつが魔物の元凶だろう。
「問題ない──『
我は属性竜の頭に移動すると──
血の大鎌を一振りし、ドラゴンを一刀両断にする──
皆は一瞬唖然とするが、その後大歓声が上がる。
余談ではあるが、魔物を狩り尽くしまくっておるせいか、既に我は物語のアークと同様に『死神』という二つ名で通っておる。
血の大鎌を使っておるからだろう。
使い勝手の悪い武器ではあるが、浪漫があるので使っておる。
それに眷属達の武器がバラバラだから被りたくないという理由もあるが……。
これから先──
物語がどうなるかはわからぬ。
もしかしたらまた『魔王』と呼ばれるかもしれぬ。
それに他国の『聖女候補』、他の登場人物も現れておらぬ。なにより、道化の正体もわからぬままだ。
問題は山積みである。
だが、我を支えてくれる者達がいる。
その者達ぐらいは笑顔で過ごせるようにしたい──
「雨が鬱陶しいな──」
我は魔力を込めて血鎌を空に向けて一振りすると、空の雲は真っ二つになり、そこから太陽の日差しが入ってくると陽光を浴びる──
「さて、これで雨も止んだな。さぁ、皆の者よ──帰るぞッ!」
「「「はッ!!!」」」
我は歩き出す──
未来に向かって──
そして、邪魔する者達は──
あの斬り裂いた空のようにしてくれる。
なんせ、優秀な部下と仲間もおる。
それに──
我は元魔王であるからなッ!
フラグなど──
全て、へし折ってくれるわッ!
────fin────
────『あとがき』────
ここまでお読み頂きありがとうございました。
アークはきっと自分の目的の為、そして、仲間や大切な者達の為にフラグをへし折ってくれると思います。
『はめデレ』は当初の予定では6話の短編予定でした。ですが、予想以上の反響で本編が始まる前までの構想があったのでコンテスト用に10万文字以上を書きました。
正直、途中で仕事の関係で不定期更新なりましたが、ラブコメ週間ではほぼ50位以内という快挙のまま完結出来たのは皆様の応援のお陰です。
最終話のように1位は無理でしょうが、少しでも人目に触れるといいなぁとは思っています。
本当にありがとうございました。
ジャンルはラブコメですが、ラブ要素、コメディ要素のある異世界ファンタジーでシリアス寄りの作品のような気がしますが、少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
最後まで読んで、少しでも『面白かった』『応援してやっても良いぞ』と思われたら──
目次下の星ボタンを【☆☆☆】→【★★★】にして頂けると嬉しいです!
ここまでお読み頂きありがとうございました(´;ω;`)
追記:本編アーク編、結末編、そしてSSを投稿しますのでブクマそのままで!
アーク編、結末編は内容が暗いので苦手な方はSSを投稿した時に見てもらえたらなと思います。
結末編が本来の完結部分になります。ここでの完結は鬱展開が苦手な人向けです。
ただ、アークが何故フラグを折る事にこだわったのか?物語との関連性は?と思われた方は鬱展開ではありますが、本当の完結である──アーク編と結末編を見てみるといいかもしれません。
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