Back side of Dungeon

椎名創佐

第1話 理想と現実


「やっとたどり着いたぞ。」


「いかにもな扉と錠、間違いないですね。」


「結構かかっちゃったわね。」


「あんたが何でもかんでも調べるからでしょ!」


「いいじゃない! お宝見逃した方がいいっていうの?」


「やめなよ、二人とも。まだ攻略できたわけじゃないんだからね。そうやって気を抜いてると痛い目見るよ。」




最後の部屋まで5日で到達とは、想定よりも2日ほど早い。

最初から見たかったな。



「準備は良いな?行くぞ!」


「「「おー!」」」


「うおりゃー!」


リーダーと思しき男性の剣士が閃光と共に剣を振り下ろす。



うわー、扉切るなよ。

取り付け結構大変なんだよ?

んー、もう扉付けない方がいいかな。

でもちゃんと道中に開錠のヒント作ったしなぁ。

まったく、雑な連中だ。

まあ、あの扉を切るとは大したもんだ。

装備から察するに、腕が立つのは間違いないだろう。



「何もいないじゃない。」


「とりあえずよく調べてみよう。」


よし、全員入った。

実力を見せていただこう。


「あれ? 入口が塞がってるわ!」


「これ何の音?」


 水の滴る音に、冒険者たちが気づく。



 演出は大事。

 強い冒険者が来たと報告があってから急いで手配したんだ。

驚いてもらえなきゃやってられない。



「「「「ぎゃーーー!!!」」」」


 いいリアクションだ。


「こいつってまさか…」


「間違いないでしょ…」


「なんでこんなところにいるのよ!」





「クラーケンだ!!!」

大正解。

実物を見るのは初めてなんじゃないかな?

有名どころは良いリアクションもらえるからいいね。


「こいつデカすぎて私の魔力じゃ全然効かない!」


「こっちの矢だって何本あったって足りないわよ!」


「足を切り落としてもすぐ再生しやがる!きりがないぞ!」


「どうやって倒せばいいのよ…」



楽しんでもらえてるようで何より。


「仕方ない。こうなったら…」


お、何か奥の手があるのかな?どうやってこいつを倒す?


「撤退するぞ!」


え、ちょっと待って。


「えっ、あたしこの杖買ったばっかりなんだけど!」


「うちだって弓新調したばっかりよ!」


うんうん、そうだろ。

あきらめるにはまだ早いんじゃないか?


「死ぬよりましだろ! いいから逃げるぞ!」


「うぅ…わかったわよ」


「「「「テレポート!」」」




あー、帰っちった。

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