第9話:高校時代の同級生
***
今日、月曜日は塾のバイトは休み。
毎週火・木・土が基本的にバイトの日だ。そして日曜は基本的に塾が休みだけど、なにかイベントごとやその準備で忙しい時は出勤となる。
月水金は朝から夕方まで、大学の講義が一日中入ってるからバイトに行けない。
講義と講義の合間に講義棟の移動があってキャンパスを歩いていたら、見覚えのある女子とたまたま出会った。
あれは……
高校三年で同じクラスだった。
なにかとにマウントを取ってきて、俺に偉そうに言ってきてた女子だ。
アイツも一浪してるって聞いてたけど、同じ
高校の時は割と地味な見た目だったけど、派手な感じになってる。
短いスカートに茶髪で化粧も濃いめだしびっくりだ。
胸がデカいのは……まあ高校時代からだな。
チャラチャラした男子二人と楽しそうに喋ってる。
──あ、こっち向いた。俺に気づいたみたいだ。
「あれっ?
「お、おう。久しぶりだな竹富」
「まさか……佐渡も青大に進学したの?」
「そうだよ」
「うわ、バカだったのに。よく合格できたね。裏口入学?」
「んなワケあるか! 浪人して頑張ったんだよ」
「ふぅーん……怪しい」
「怪しくねえよ!」
俺と竹富のやり取りを見たチャラ男子が訝し気な視線を俺に向けてきた。
「なあ祐子。知り合いか?」
「うん。高校の同級生で佐渡っていうヤツ」
「ふうん……」
やたらとがっちりした男だな。何か格闘技系のスポーツをやってたような感じ。
もう一人は背の高いイケメン。
二人ともチャラチャラした感じだ。
「あ、そうだ佐渡。私『フリーアクティビティ』っていうレジャーサークルに入ったんだ。こちら三年の
「あ、どうも。佐渡です」
あれ?
なんだよ。俺が会釈したのに二人とも無視か。
感じわりぃ。
「佐渡もウチのサークル入らない?」
「おいおい祐子。勝手に勧誘するなよ。男は要らん。祐子みたいな可愛い女の子だけ入ってくれたらいいんだよ」
「うわぁ、玉木先輩お上手ぅ~」
身体をくねくねして喜んでんじゃねえよ竹富。
こいつは高校ん時は地味だったし、そんなモテるタイプじゃなかった。
だからイケメンにチヤホヤされて舞い上がってるんじゃないのか?
「お上手じゃねえよ。祐子が可愛いってのは事実を言ってるだけ」
「ええ~っ? 嬉しいなぁ。でもでも先輩。佐渡って高校ん時は柔道部だったんだよ。パッとしないやつだけど力仕事とか雑用係にちょうどいいじゃない?」
「柔道部……?」
金本って先輩が、胡散臭そうに俺を見てる。元柔道部だからなんだってんだよ。
「うんそうだよ。パッと見は細くて弱そうだけど、県大会の決勝まで行ったんだよ。ね、佐渡?」
「あ、うん。まあ過去の話だ」
高三の県大会では色々とあったからな。
決勝で反則負けしちゃったし。
思い出したくもない。
「なるほどな。県大会敗退か。そりゃ知らんわ」
「そうだぜ祐子。この金本は高校時代に柔道部で全国大会まで出たんだからな」
「ええ~っ、そうなの? 金本先輩凄いじゃん!」
「おう。もっと褒めろ」
「カッコいい、金本先輩っ!」
バカだ。こいつら絶対にバカだ。
そう言えば『スーパーアクティビティ』略称『スー・アク』って、ヤリサーだって噂を聞いたことあるぞ。竹富のヤツ、大丈夫か?
「なあ竹富。そんなサークルやめとけよ」
「は? 急に何よ? 自分が入部を断られたからって、そんなこと言う? 私が大学生活を楽しんでるのがそんなに悔しいの? なに嫉妬してんのよ。最低だね佐渡」
「嫉妬なんかじゃねえよ。もっと真面目なサークルの方がいいんじゃないかって……」
「おいお前! 黙って聞いてりゃ何言ってんだ? 俺らは真面目なサークルだよ。なあ祐子」
うわ。真面目とか言いながら、あの金本ってやつ、いきなり竹富の腰に手を回してるよ。どこが真面目だよ。
「うんうん、そうだよ。先輩たちはテニスとか丁寧に教えてくれるし、今度おごりで歓迎会もしてくれるって言ってるし。優しんだからね。お洒落で面白くてイケメンな先輩たちに、佐渡は嫉妬してるだけなんだよね? あはは」
嘘つけ。真面目なヤツがいきなり女子の腰に手を回したりするもんか。
でも竹富も抱き寄せられて、まんざらでもない顔してやがる。
本人がその気なら、俺が口出しするまでもないな。
アホらし。
「まあとにかく。痛い目にだけは合わないように気をつけろ」
一応警告はしといたぞ。あとは自己責任だ。
高校の時からいつも俺を小バカにしてた竹富がどうなったって俺は知らん。
そんなことより、早く次の授業が行われる講義棟に行かないとな。
──遅刻したら困る。
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