第166話 足湯

 教会や隣接する孤児院や学び舎を見学した後は、桜の木がある広場へと案内する。ここには汗と涙の結晶第3弾!足湯を作りました!


 足湯には疲労と足の浮腫みを取り、かつ清浄にする効能を付けてある為、歩き回って疲れた足を癒やすのにピッタリ!

 満開の桜を眺めながら足湯に入るこの贅沢・・・。最高だよね。


「あれ?先客?」

 クレマンと同年代くらいの老年の男性が、足湯に浸かりながらワインを片手にのんびりとお花見を楽しんでいる。


 確か今回の視察が終わるまでは、足湯はまだ一般開放していないはず。それに一般には開放していないドリンクバーか、アマリア聖王国でしか入手できないワインを持っている。誰だろう。温泉に入りに来た神様かな?


 MAPで確認すると、金色に光るマーカー。そしてマーカーの上には【 創造神ゼノス 】の名前が表示されている。


「えっ!?ゼノス様!?」

「おお、桜か。また良いもの足湯を作ったのう。」

「あ、ありがとうございます。そのお姿は一体・・・。」

 アマリア聖王国が復興して少し経った頃、以前より若干若返った姿は拝見したけど、今の姿はその頃より遙かに若い。


「桜のおかげでこの所、急速に力が戻って来ておってな。感謝するぞ。」

「本当ですか!?良かった~~~!」

 すぐにでも消滅しそうだった面影は全くない。陽菜達を地球に返す為の力まで、また一歩近づいたね!


 ゼノス様と力が戻って来ている事を喜んでいると、横に居たマイルズさんが私の服を遠慮がちに引っ張った。

「桜さん・・・。あの・・・こちらの方は・・・?今、ゼノス様と聞こえたのですが・・・?」


 そうだった!今は視察団ご一行様を案内中だった!どうしようかな。何て説明したら良いかな。

 助けを求めて周りを見渡してみる。ゼノス様、微笑む。クレマン、目を逸らす。こっそり護衛をしているカイは、気配が消えた。


 いっそもう、ありのままを話そうかな。今後力を借りる事があるかもしれないし。うん、話しちゃおう!


 意を決して視察団ご一行様に目を向けてみると、イザヤさんとガンドール王の顔が引きつっていた。マイルズさんとカルロさんは、目を輝かせている。


「皆様にご紹介致します。こちらの方は創造神ゼノス様です。」

「初めまして。いつもうちの桜がお世話になっておるのう。」

 保護者のような挨拶をするゼノス様。日本に居た頃、こんな風に挨拶された事なかったから、何だか少しくすぐったい。


「そ、創造神様だと!?」

「ゼノス様!!何と神々しい!!!」

「まさか生きてお目にかかれるとは・・・!」

 驚くガンドール王に、喜び歓喜しているカルロさんとマイルズさん。イザヤさんに至っては言葉も出ず、魂が抜けそうなほど口をポカンと開けている。


「その祭服はアマリア聖王国の神官かのう?お主達の信仰心のおかげで、今も儂は存在する事が出来ている。感謝するぞ。」

「もったいないお言葉に胸が打ち震えております!!!このカルロ・デッラ・アルティエリ、今後はいっそう誠心誠意創造神様にお仕えする所存でございます!!!」


 カルロさんは涙を流しながら、ゼノス様に忠誠を誓っている。普段ここまで感情を爆発させた所を見た事がなかったから、ちょっとビックリ。


 このままだとカルロさんはゼノス様の側に張り付いて離れそうにない。ゼノス様にはゆっくりして欲しいし、足湯はまた今度にして今日はもう温泉宿に行ってしまおう。


「ほら、行きますよカルロ!」

「離して下さいぃぃぃ~~~!!!ゼノス様ぁぁぁ~~~!!!」

「良いから来な!!!」


 マイルズさんとイザヤさんに引きずられてカルロさんはを強制退去。このままクレマンに先導してもらい、温泉宿まで連れて行ってもらおう。


「お騒がせしてすみませんでした!ゼノス様はゆっくりされて下さいね!」

「ありがたいのう。桜の言葉に甘えて、のんびりさせてもらうとしようかのう。」

 

 嬉しそうにワインを飲みながら桜を眺めるゼノス様。少し前までは現世に現れる力も無かったとは思えないぐらい穏やかな時間が流れている。少しは恩が返せてると良いな。






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