第135話 クロックムッシュとボス戦

 第10層の扉の前に到着。5層の時とは違う雰囲気の豪華な造りの扉。カティアダンジョンでは、全てのボス部屋の扉は同じだった。という事は、これはもしかしたらダンジョンボス?


 期待と興奮を胸にいざボス戦へ!!!と、その前に一旦お昼休憩にしよう。

 本日のランチはクロックムッシュ。バターが出来てから無性に食べたくて、暇な時に作り貯めしておいたんだよね。


 卵液が染み込んだフレンチトースト風のパンにハムとチーズを挟み、仕上げにペシャメルソースとチーズを乗せて焼いてある。

 作ってすぐに収納にしまっておいたから、熱々の状態。バターの良い香りが食欲を刺激してくる。


「熱いから火傷に気をつけて食べてね!」

「「 はーい!いただきます! 」」

「いただきます!」


 パクリ


「美味しーーーい!」

 クリーミーな味わいで、濃厚なのにしつこくない。まさに至福のひととき。

 今度は目玉焼きを乗せてクロックマダムも食べたいな~。


「桜!これ!美っ味い!」

「美味しいよー!また作ってねー!」

 コタロウとリュウにも高評価。お髭にソースが沢山付いている事にも気付かない程、夢中で食べている。乾いてカピカピになる前に拭いてあげなきゃね。



 美味しいご飯で活力いっぱい!今度こそいざボス戦へ!

 少し重たい扉を開けて中を覗き込むと、真っ暗でボスの姿が全く見えない。


 意を決して一歩中に入ると、入口の壁にある照明器具に明かりが付き、そこから部屋中に明かりが走っていく。ゲームとかで良くあるボス部屋の演出みたいで、テンション上がるー!


 ボス部屋中央に陣取るのは、5mはあるであろう大きさの虹色に光るポヨポヨ。早速鑑定してみると


 マザースライム

 HP 10000/MP 10000

【スキル】

 溶解、巨大化

【シークレット】

 全てのスライムの母。ダンジョンボス。


 マザー!今まで倒してきたスライム達は、全て彼女の子供って事?何だか居た堪れない気持ちになってくる。


 私達が来た事で全てを悟ったマザースライムが、プルプルと震えだした。次の瞬間マザースライムの大きさが倍近く大きくなった。幸い天井は見えないほど高いので、部屋が崩れる心配はしなくて良さそう。


 泣いてるのかと一瞬勘違いしそうなった自分が恥ずかしい。スキル巨大化を使う予備動作といった所かな。


 コタロウとリュウも通常の大きさへと戻っているけど、それでもビッグスライムの半分ほど。私はというと・・・首が痛くなるよね。


「コタロウ、リュウ、怪我しないでね!行くよ!」

「おう!」「はーい!」


 コタロウとリュウが目で追えない速さでマザースライムへと走り寄る。

 しかしマザースライムはその巨体からは想像出来ない程の速さでピョーンと跳んだかと思うと、コタロウとリュウの上へ落下してきた。押しつぶす気だ。


 2匹はすぐさま左右に分かれてその巨体を避けると、すぐさま反転して反撃に移る。

 コタロウは跳躍し、マザースライムの上から爪を振り下ろし、それをプルンと避けた所へリュウの雷魔法による電撃が炸裂する。


 バリバリバリバリッッッ!!!


 凄まじい威力の電撃を浴びたマザースライムだったけど、さすがに一撃では倒れなかった。

 さてどうするかと考えていると、マザースライムが見た事ない行動を取り始めた。何と自分の体を飲み込んでいる。


 あまりの光景に思わず息を飲む。止めることも忘れ、どうなるか見入ってしまった。

 体をすべて飲み込み、プルンと1回震える。すると焦げ跡が綺麗に無くなったマザースライムがそこに居た。

 違う所といえば、一回り小さくなった?脱皮みたいな物なのかな?


「焦げ跡が無くなった!?」

「そんなー!せっかく直撃したのにー!」

 2匹は連携で与えたダメージが無くなった姿に、驚きを隠せないでいる。しょんぼりしているリュウを撫でながら、作戦を伝える。


 スライムは核を壊さなきゃ倒せないけど、マザースライムは大きすぎて核まで攻撃が届かない。という事で、

「【 届かないなら届くまで縮めて見せようホトトギスじゃなくてマザースライム! 】作戦開始!」

「「 おーーー!!! 」」


 今度は私も攻撃参加するよ!コタロウとリュウがマザースライムに近接する前に、光の弾丸で核を狙い撃つ。

 僅かに核までは届かないながらも、かなりのダメージは入ったはず。


 そこにすかさずコタロウが、風魔法で弾丸の跡に追加ダメージを入れていく。リュウも雷魔法で確実にダメージを蓄積させる。

 ここでまたマザースライムが体を飲み込み始めた。

 試しにこのタイミングで攻撃してみたけど、全く効いた気がしない。これは脱皮が終わるのを待つしないのかな。




「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーー!疲れたーーー!」

「やっと終わった・・・。」

「僕もう無理ー!」


 あれから4、5回脱皮を繰り返しては体を縮め続けた結果、やっと核まで弾丸が届き倒すことが出来た。さすがにタフ過ぎて、私もコタロウ、リュウも疲労困憊だ。


 何はともあれこれでご褒美ダンジョン攻略だ!宝箱探さなきゃ。

 疲れきって寝そべってる2匹にはそのまま休憩してもらい、1人で宝箱を探して回る。

 他の階層の様にボス部屋の奥に扉があり、その近くに宝箱を発見。


「あったよー!」

「何が入ってるかな?」

「 お宝お宝ー! 」


 宝箱に罠がないのを確認してから蓋を開ける。コタロウとリュウも一緒に覗き込んでいる。もふ毛が頬を擽り気持ち良い。


 宝箱の中にはピアスが6個、銀色に輝く腕輪2個、丸めてある布、金板が入っていた。


 鑑定すると、ピアスは念話ピアス。どうやら同じ色のピアス同士で、念話が出来るようになるらしい。


 ただの布だと思っていた丸めてある布は、空飛ぶ絨毯。憧れだったのー!今度コタロウ、リュウと一緒に空を飛んでみよう!


 そして2個入っていた腕輪は、身代わりの腕輪だった。致命傷を負った時、一度だけ身代わりになって助けてくれるという。

 この腕輪は絶対コタロウとリュウに着けてもらおう!



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