第10話

「これで、目的達成ですね?」


「まあ、そうなりますね」


「じゃあ、わたし行きます」


「そうですか」


「わたし。人から、好かれる体質なんです。むかしから、同じところにいると、誰かに好かれちゃうから。それで、いろんなところ転々としてて」



「あなたと一緒にいて。ようやく、同じ場所にいていいんだって、ちょっとだけ、思えました」


「目つきがけわしいのは」


「好かれないようにって。せいいっぱいの、反抗です。わたしの」


 彼女。

 屋上の高いところから、するすると降りていく。


「あの。わたしの笑顔。どうでした?」


 去り際の彼女。


「綺麗でした」


「そうですか」


 最後に見た彼女の表情は。


 かなしそうな、顔だった。

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