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近くに海があるおかげか、漂う風は何処か冷たくて、不快な蒸し暑さも、此処では差程気にしなくていいのも助かる。


海の香りと、辺りの紫陽花で相まった、梅雨特有の緑の香りが混ざって、私の心を波立たせる。


それは、長らく置き去りにしていた、子供心を擽るような、


何かの始まりを期待させる、そんな気分に私をさせた。


「何か、良いな…」


屋根の下、落ちていく雨粒を眺めながら、独りごちた。


紫陽花の色が、私の世界に色覚を戻し、


海と緑の香りが、眠った意識におはようを告げて、


降りしきる雨が、心の澱を、洗い流してくれる。


いっその事、雨の中に飛び込んで、せっかく乾かした衣服も含めて私毎、水に浸してやるのもいいかもしれない。


そんな事を、考えていた時だった。

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