3
近くに海があるおかげか、漂う風は何処か冷たくて、不快な蒸し暑さも、此処では差程気にしなくていいのも助かる。
海の香りと、辺りの紫陽花で相まった、梅雨特有の緑の香りが混ざって、私の心を波立たせる。
それは、長らく置き去りにしていた、子供心を擽るような、
何かの始まりを期待させる、そんな気分に私をさせた。
「何か、良いな…」
屋根の下、落ちていく雨粒を眺めながら、独りごちた。
紫陽花の色が、私の世界に色覚を戻し、
海と緑の香りが、眠った意識におはようを告げて、
降りしきる雨が、心の澱を、洗い流してくれる。
いっその事、雨の中に飛び込んで、せっかく乾かした衣服も含めて私毎、水に浸してやるのもいいかもしれない。
そんな事を、考えていた時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます