第百二十二話 空と胡桃の歓迎会

 胡桃の『朝ごはんは異世界で食べるんだからね!』という願い。

 空はそれを叶えるため、いよいよ食事処へ向かった。


 この食事処はシャーリィのおすすめであり、とても美味しいとのことだった。

 けれど、空は思いもしなかった。


「はい。こっちがトマトのチキン煮で、これがクリームの白菜煮ね」


 と、料理をテーブルににのせるのは、店主である女性だ。

 店が繁盛していることからわかる通り、彼女は忙しいに違いない。

 店主さんはさっさと行ってしまう。


「…………」


「…………」


「わぁ~! すごく美味しいそうだぞ!」


 と、空と胡桃が沈黙しているなか、一人ぱくぱく料理を食べ始めるシャーリィ。

 正直、とっても美味しそうである。


 故に空はこの空気をなんとかするため、胡桃へ話しかける。


「あ、あはは……おかしな料理名だね! 普通はチキンのトマト煮と、白菜のクリーム煮だよね!? あ、あははははは……は」


「……ねぇ」


「はい」


「あんたさ、ゴリラ娘って華奢で可憐って言ったわよね?」


 やはり来たか。

 さて、胡桃が今更この話をしてくれるのには理由がある。


 この食事処の名前は『ゴリラ亭』。

 店主のおばちゃんは……ゴリラ娘族だった。


「店主のおばちゃん、すっごく筋肉質でめちゃくちゃがたいよかったわよね……あんたさ」


 と、ジトっとした瞳で睨んで来る胡桃。

 彼女は続けて空へと言ってくる。


「てきとう言ったでしょ」


「うぐっ」


「えっと……そんこと、ないよ」


「あたしはね、あんたがその場しのぎで嘘ついたこと怒ってるんだけど。種族とかはどうでもいいの……だって、そういうものだもん」


「はい……ごめんなさい」


 この日、空は学んだのだった。

 その場しのぎで適当なことを言うと、あとあと余計に大変なことになると。

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