第四十四話 空とシャーリィの奴隷講座
時は空がシャーリィに事の経緯――胡桃がどうして空の奴隷になったのかを語ってから、数分後。
「クー! シャーリィは嬉しい!」
と、空に飛びついてくるシャーリィ。
彼女はそのまま彼を抱きしめながら、続けて言ってくる。
「シャーリィはてっきり、クーがシャーリィに飽きたと思ったんだ!」
「僕がシャーリィに?」
「そうだ! 倦怠期っていうやつだ! 母さんが言ってた! 男は飽きっぽいから、身体で繋ぎ止めておかないとダメなんだ!」
「…………」
(シャーリィのお母さん……娘に何を教えているんですか)
と、空がそんなことを考えていると、狐尻尾をふりふりシャーリィ。
彼女が再び言ってくる。
「もう一回確認だ! クーはクルミが気に入ったから奴隷にしたんじゃないんだな? クルミがどうしてもって、無理やりお願いしてきたんだな?」
「まぁそういうことに――」
「ちょっと待ちなさいよ!」
と、割り込んでくる胡桃の声。
彼女はもはや定位置となったベッドの上から、ぷんすか空へと言ってくる。
「あんたね! なに!? あたしのこと気に入ってないの!?」
「え……」
「え?」
え……あれだけボロクソ言われたり、暴力振るわれて胡桃を気に入る奴がいるだろうか。
いや、いない。
空がそんなことを考えていると、再び胡桃は言ってくる。
「あんたバカなの!? 学内序列十位! 男子たちが仰ぐこの容姿! そして、圧倒的な異能! 世間からの注目度ナンバーワンの梓胡桃! この梓胡桃が奴隷になるって、そう宣言してあげてるのに、何が気に入らないのよ!」
「というか、そもそも奴隷になってほしいって言ってないし!」
「はぁ!? あんたここまで来て、まだそれ言うの!? 嫌だ……小さい、この男……心の器が小さい……小さすぎてドン引きするんだからね!」
「そういうところだよ! 僕が気に入らないのは、そうやって悪口連呼で畳みかけてくるところ!」
「はぁ? 可愛い女の子の悪口くらい受け入れなさいよね!」
と、胡桃は足を組み、自らの髪をさっと手の甲で払う。
なんとも偉そうな仕草である。
やはり胡桃とは合わない。
以前も言った通り、空は胡桃と話していると冷静さを失ってしまうのだ。
冷静さを失うことを彼女のせいにするのは、どうかというのは理解して――。
「ぷっ……ぷはははははははははっ!」
と、突如響くシャーリィの声。
彼女は抱き着いたまま器用に空の背後に回り、彼の肩に顎をのせながら胡桃へと言う。
「クルミは奴隷になったのに、ゲートを通れなくて困ってるって言ったな!」
「そ、そうよ! 空の奴隷に仕方なくなったのに、これじゃあ奴隷のなり損よ!」
「ふっふーん! シャーリィにはクルミがゲートを通れない明確な理由がわかるぞ!」
「っ! な、なによそれ! 教えなさいよね!」
空としてもそれは非常に興味がある。
その条件を知れば、今後のためにもなるに違いないのだから。
と、空が緊張してシャーリィの言葉を待っていると――。
「それは愛だ!」
彼女はよりいっそう、空を抱きしめながら言ってくるのだった。
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